古河(市)(読み)こが

日本大百科全書(ニッポニカ) 「古河(市)」の意味・わかりやすい解説

古河(市)
こが

茨城県南西端にある市。栃木、埼玉両県に接する。1950年(昭和25)市制施行。1955年新郷(しんごう)村を編入。2005年(平成17)猿島(さしま)郡総和町(そうわまち)、三和町(さんわまち)を合併。関東平野の中心を占め、猿島台地の西端部と渡良瀬(わたらせ)川、利根(とね)川の低湿地をもつ。JR東北本線、国道4号と125号、354号が通じる。中心地の古河は古くは許我(こが)、古我と記された渡し場で、中世には古河となった。豪族下河辺(しもこうべ)氏の支配地のあとに古河公方(こがくぼう)と称された足利成氏(あしかがしげうじ)が古河を居城として5代130年間、関東の政治、文化の一中心となった。日光街道の要地でもあり、近世は徳川譜代(ふだい)大名が古河藩主となり、土井(どい)氏のとき廃藩。学問が盛んで藩校盈科堂(えいかどう)があり、『雪華図説(せっかずせつ)』を著した藩主土井利位(としつら)、家老で蘭学者(らんがくしゃ)の鷹見泉石(たかみせんせき)、河口信任(しんにん)(医学)ら科学上の業績をあげた出身者が多い。

 明治、大正にかけて渡良瀬川の河道拡幅工事のため、旧市街地の一部や古河城跡河川敷となって消滅した。旧士族のおこした製糸業は発展して古河の代表的工業となったが、第二次世界大戦後衰退した。既製服などの縫製業や電子機械、自動車部品工業が発達し、坂間企業団地などに企業が進出している。洋傘、マネキン人形、渡良瀬川のヨシが原料の「よしず」などの特産もある。フナ甘露煮は名物である。東京の通勤圏に入り、住宅団地も多く、通勤者が増加している。古河公方足利成氏館(やかた)跡は県指定史跡で、周辺は古河総合公園として整備され、1998年(平成10)ほぼ完成した。旧飛田(とびた)家住宅は国指定重要文化財。また、1991年に開館した篆刻美術館(てんこくびじゅつかん)(篆刻は石に刻んだ文字を鑑賞する書道芸術の一種)は1920年(大正9)に建設された三階建ての石倉を改修したもので、国の登録有形文化財となっている。そのほかにも、鷹見泉石の晩年の住まいを改修した鷹見泉石記念館、豊富な文化財の収蔵、展示を目的にした古河歴史博物館(1990年開館)、古河文学館(1998年開館)などがある。奇祭「古河提灯竿もみまつり(こがちょうちんさおもみまつり)」(元来は古河藩領の栃木県野木町野木神社の祭礼)は有名である。面積123.58平方キロメートル、人口13万9344(2020)。

[櫻井明俊]

『『古河市のあゆみ』(1970・古河市)』『『古河市史』3冊(1973~1981・古河市)』『山口忠著『古河新誌』(1958・古河市郷土史研究会)』


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