反射のみかた

内科学 第10版 「反射のみかた」の解説

反射のみかた(神経疾患患者のみかた)

(10)反射のみかた
 反射(reflex)は腱反射,表在反射,病的反射に分けられる.
 腱反射は筋伸長反射であり,被験筋の腱に打鍵器で適切な伸長刺激を加える必要がある.被験者が緊張してしまうと,反射が誘発されにくくなるので,十分リラックスさせて検査する必要がある.緊張がとけない場合には,当該反射と離れた筋群を打鍵と同時に収縮させて被験者の注意をそらせるJendrassik手技により増強を試みる.腱反射の程度は,欧米では消失を0,低下を1,正常を2,亢進を3,クローヌスレベルの高度の亢進を4と記載する.左右差を表現するために,これに+,-をつける場合もある.わが国では-,±,+(正常),++,+++や,0,↓↓(著明低下),↓(軽度低下),N(正常),↑(軽度亢進),↑↑(著明亢進)などという記載が多い. 腱反射は通常では,下顎反射,上腕二頭筋(C5,6髄節支配),上腕三頭筋(C6〜8),膝蓋腱(L2〜4),アキレス腱(L5,S1,2)反射を評価すれば十分である.腱反射の低下は反射弓のいずれかの構成要素の異常を,亢進は脊髄反射中枢につながる上位運動ニューロン(錐体路)の障害を意味する.
 表在反射は多シナプス反射であるが,遠心路は錐体路であるため,錐体路障害では減弱,消失する.腹壁反射(T9~12),挙睾筋反射(L1,2),肛門反射(S2〜4)などが用いられる.
 病的反射は正常成人では認められない反射で,足底外側縁に沿って踵から刺激を加えると,母趾が正常の底屈とは逆に背屈し,他の足趾も開扇するBabinski徴候が,最も確実な錐体路徴候として重要である.外踝後方を刺激して同様の現象を誘発するChaddock徴候も意義は同じであるが,足底刺激を加えることができない場合にも有用である.手指屈曲反射(Hoffmann反射,Trömner反射,Wartenberg反射)も従来は病的反射とされてきたが,正常者でもみられる反射であり,左右差が認められる場合に限り病的意義をもつ. いわゆる原始反射には,吸引反射,把握反射,手掌頤反射,緊張性足底反射などがあり,成人で認められる場合には前頭葉の障害を示す.[西澤正豊]
■文献
水澤英洋,宇川義一編著:神経診察:実際とその意義,中外医学社,東京,2011.水野義邦編:神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 第4版,医学書院,東京,2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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