双子葉植物(読み)そうしようしょくぶつ(英語表記)Dicotyledoneae

精選版 日本国語大辞典 「双子葉植物」の意味・読み・例文・類語

そうしよう‐しょくぶつ サウシエフ‥【双子葉植物】

〘名〙 被子植物の一群。植物の門、亜門、綱などとして分類される。普通、胚(はい)は二枚の子葉をもち、茎・根に形成層があり、葉は網状の葉脈をもち、根に主根と側根の区別がある。茎の維管束は真正中心柱をなす。花の構造は四または五数性。花弁の合着の有無によって、合弁花離弁花に分けられることが多い。双子葉類。〔植物学語鈔(1886)〕

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デジタル大辞泉 「双子葉植物」の意味・読み・例文・類語

そうしよう‐しょくぶつ〔サウシエフ‐〕【双子葉植物】

被子植物の一群。子葉は原則として2枚で、葉に網状脈をもち、茎には形成層がある。かつては単子葉植物に対する分類群だった。もっとも新しい植物分類体系であるAPG分類体系では、スイレンモクレンなどの原始的な双子葉植物の一群とキクバラなどの真正双子葉植物に大別される。双子葉類。

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改訂新版 世界大百科事典 「双子葉植物」の意味・わかりやすい解説

双子葉植物 (そうしようしょくぶつ)
Dicotyledoneae

単子葉植物と並ぶ被子植物の二大区分の一つで,分類階級はふつう綱のランクで取り扱われ,モクレン綱Magnoliopsidaともよばれる。子葉は2枚,まれに1枚または3枚以上。ふつう,胚の幼芽は頂生し,側生する2枚の子葉の間より伸長する。幼根は発達して主根となるが,地下茎を形成する場合など,主根が発達しないこともある。茎は真正中心柱をもち,維管束は並立型,ふつう,形成層が発達して二次生長をする。二次生長が強ければ木本,弱ければ草本になり,極端な場合には二次組織はほとんど形成されない。葉は多くは葉身と葉柄に分かれ,しばしば托葉をもつ。複葉はふつうに見られ,小葉の原基がそれぞれに分化,発達することによって形成される。花は2数性,3数性,4数性,5数性などいろいろの場合があり,花被は萼と花冠よりなる場合が多い。地上茎はよく発達して分枝し,多くの葉をつけるものから,発達が悪く,代りに地下茎と根生葉が発達するものまで,いろいろな性状のものがある。約60目,300科,1万属,16万種が含まれる。

 双子葉植物は離弁花類Apopetalae,Choripetalae(古生花被類Archichlamydae)と,合弁花類Sympetalae,Gamopetalae(後生花被類Metachlamydae)に分けられることが多い。この区別は主として花弁が離生するか合生するかによるが,合弁花離弁花より進化しており,合弁花類は離弁花類のいろいろな群より進化して合弁花をもつに至ったものの寄集めで,系統的にまとまった群ではない。

 双子葉植物を大分けする有力な説はまだない。しかし一応は,モクレン目,キンポウゲ目,スイレン目など離生心皮をもつ群(多心皮類Polycarpicae),オトギリソウ目,アオイ目など上より下へつくられるおしべをもつ群,クルミ目,ブナ目など小型の単性花を尾状の花序につける群(無花被あるいは無花弁類Apetalae),ナデシコ目,タデ目など独立中央胎座ないしは基生胎座をもつ群(中心子群Centrospermae),バラ目,フトモモ目,セリ目など萼が宿存して萼筒をつくり,花要素の定数化と輪生が確立する群,シソ目など子房上位で合弁花をもつ群,キク目など子房下位で合弁花をもつ群などに大別される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「双子葉植物」の意味・わかりやすい解説

双子葉植物
そうしようしょくぶつ

被子植物のうち、子葉の数が2個のものをいい、単子葉植物に対する分類群。子葉の数を重要な分類形質として最初に取り上げたのはフランスのロベールM. Lobelius de L'Ober(1538―1618)で、のちにジュシューがこれに基づいて無子葉植物(隠花植物)、単子葉植物、双子葉植物の三群を分類し、これが自然分類の出発点ともなった。双子葉植物の子葉は2個とはいっても、なかには子葉が1個、あるいは3個以上の種類もある。これは、子葉の癒合や一方の短縮によるとも考えられている。しかし、こうした子葉の数の特徴は同一種内では安定している。たとえばセツブンソウEranthis pinnatifida、コマクサDicentra peregrina、ムシトリスミレPinguicula vulgaris var. macrocerasなどはつねに単子葉性を示し、デゲネリア属では3個、トベラ属では3個ないし4個といった多子葉性を示す。

 双子葉植物の生活型(形)には多様性があり、木本、草本、一年草多年草とさまざまである。葉は葉柄と葉身に分化し、托葉(たくよう)のあるもの、基部が鞘(さや)状になるものなどがある。一次脈には羽状脈、掌状脈、三行脈などがみられ、二次脈は網目状になる。茎は多くの場合真正中心柱で、木部と篩(し)部の間には維管束形成層があり、二次肥大成長を行う。この結果として多量に形成された二次木部は材となる。花は萼片(がくへん)、花弁、雄蕊(ゆうずい)(雄しべ)、雌(し)蕊(雌しべ)などの花葉からなり、多くの場合五数性だが、四数性や三数性などもある。花葉は原始的なものでは離生し、進化したものでは合着する傾向を示す。これに基づいて、双子葉植物は合弁花類と離弁花類に大きく分類することができる。花を進化のうえからみると、放射相称から左右相称への移行が認められる。種子が発芽して生じる子葉には、地上に出るものと地中に残るものとがある。幼芽は子葉の間から伸び、幼根は発達して主根になるが、主根が枯死して胚軸(はいじく)などから不定根を発達させることも多い。

[杉山明子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「双子葉植物」の意味・わかりやすい解説

双子葉植物
そうしようしょくぶつ
Dicotyledoneae

被子植物のうち胚の子葉が2枚 (またはそれ以上) ある植物をまとめた分類群。子葉が1枚の単子葉植物に対応し,それぞれ系統学的にもまとまった自然群を示すと考えられる。被子植物を子葉数で2群に分けたのは A.ジュシュー (1748~1836) で,植物の自然分類の出発点となった (1789) 。この2群の間には子葉数のほかにも葉脈の分れ方 (脈理) や茎の維管束の配列,花を構成する器官の基本数などにも著しい差異がみられる。すなわち,双子葉植物では葉脈は羽状 (または掌状) に分岐し,さらに支脈が網目状に連絡するいわゆる網状脈をもつのに対し,単子葉植物では葉の基部で分枝したままほぼ平行に走る平行脈となり,支脈間の連絡も簡単である。維管束の配列は,一般に双子葉植物では真性中心柱といって,茎の中央部に木部が,周辺部に師管部があって放射状に配列し,形成層によって木部が肥大生長するのに対し,単子葉植物では散在中心柱で,茎の内部に維管束が不規則に散在し,このため肥大生長を行わない。双子葉植物はさらにツツジ科,シソ科,キク科などのように花弁が筒状に癒合する合弁花類 (後生花被類) とバラ科,マメ科,セリ科などのように癒合しない離弁花類 (古生花被類) に二大別されることがあり,後者にはヤナギ,ドクダミのように無花被花のものや,イラクサ,タデのように単花被花をもつ類も含まれる。しかし,この区別は最近の分類体系では採用されないことも多い。

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百科事典マイペディア 「双子葉植物」の意味・わかりやすい解説

双子葉植物【そうしようしょくぶつ】

被子植物を大きく二つに分けるとき,子葉が1枚の単子葉植物に対して,子葉が2枚あるものをいう(ただし,まれに1枚または3枚のものもある)。葉脈は網状で,花を構成する各部分は5または2の倍数であることが多く(3の倍数のものも一部ある),茎の横断面で見た維管束がほぼ円周状に配列しているなどの特徴がある。合弁花類と離弁花類に分けられることが多い。
→関連項目被子植物木本レイ

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世界大百科事典(旧版)内の双子葉植物の言及

【被子植物】より

裸子植物とならぶ種子植物の二大区分の一つで,分類上,ふつう亜門とされるが,有花植物Anthophyta,またはモクレン植物Magnoliophytaとよばれて,門にされることもある。もっとも進化した植物群で,現在,双子葉植物単子葉植物に二大別され,約22万種が知られている。
[被子植物の多様性]
 被子植物は驚くほど多様性を示し,大きさでみてもミジンコウキクサのように1mmにみたないものから,ユーカリノキ属のように百数十mに達するものまで,これだけ違いのある生物群はほかにない。…

※「双子葉植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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