双堂(読み)ならびどう

改訂新版 世界大百科事典 「双堂」の意味・わかりやすい解説

双堂 (ならびどう)

前後に2棟の堂を接続し,一つの空間を構成した古代の建築。古代建築では部材や構造上の制約から,梁間(はりま)を極端に大きくできないので,比較的短い梁で大空間をつくるための工夫であるが,両方の軒先の接触線に大きな樋(とい)を通し,雨が漏らないようにした(法隆寺西院食堂,細殿など)。また,仏の聖なる空間と人が礼拝するための空間とを別構造でつくって接続し,一つの機能の仏堂としたり(東大寺法華堂),神の夜の御殿と昼の御殿に使い分けるもの(宇佐八幡宮本殿)もあり,後者の延長上にあるものは,平城宮内裏や地方官衙にもみることができる。なお密教における常行三昧堂法華三昧堂のように,2棟を離して建てて渡廊(わたりろう)でつなぐものは〈担い堂〉と呼ばれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の双堂の言及

【伽藍配置】より

…13世紀(鎌倉時代)に禅宗が導入されると,三門,蓮池,法堂(はつとう)などが前後一列に並ぶ伽藍配置が復活する。古代には,仏殿はその名のように仏像だけをいれる堂で,祀は堂前でおこなったが,雨の多い日本では礼堂を前に設ける双堂(ならびどう)がつくられ,さらに両者を一つ屋根で覆う縦深の本堂形式が発達し,これに僧侶の住む庫裡,鐘楼などが各宗派独自に配される今日全国に見られる寺院形式が定着していった。 中国に仏教が伝わった時期に,貴族の邸宅は正面の主殿に東西脇殿を配しており,その中庭に塔を建ててまつったので,一塔三金堂形式が初源的な伽藍配置であったろうとする説もあるが,雲岡その他の石窟寺院で釈迦と多宝仏の双塔を配する石窟の多いことから,薬師寺式も早くからつくられていた可能性が強い。…

【社寺建築構造】より

…また傾斜した屋根をもつため,奥行きの深い建物は屋根がそれにともなって大きくなるのでつくられず,いくつもの建物を建てつらねてゆくことが多い。なかには双堂(ならびどう)のように,二つの屋根の軒先を接するようにして奥行きの深い建物をつくる例もある。屋根の棟に平行な方向を桁行(けたゆき)と呼び,これと直角な方向を梁行(はりゆき)と呼ぶ。…

【神社建築】より

…この前殿と後殿はともに神の空間とみなしてよく,両者に神座が設けられている。八幡造は寺院建築における双堂(ならびどう),すなわち桁行長さの等しい正堂と礼堂(らいどう)とを前後に並立する形式に範をとって創始されたとされているが,これについてはなお考えるべき余地が多い。宇佐神宮は8世紀初期にはすでに朝廷の厚い崇敬を受けていた。…

※「双堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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