参来(読み)さんらい

精選版 日本国語大辞典 「参来」の意味・読み・例文・類語

さん‐らい【参来】

〘名〙
貴人部屋御殿などにはいってくること。立ち現われること。
天徳四年内裏歌合(960)「仰令殿上。即左大臣清慎公〈略〉朝成朝臣参来候座」
仏道の実践修行によって明らかにすること。参究。転じて、思いめぐらすこと。
正法眼蔵(1231‐53)春秋仏祖かならず参来せり。参来せるは仏祖なり」

まい‐・く まゐ‥【参来】

〘自カ変〙 高貴な人のもとや高貴な場所に来る。もうく。
古事記(712)下・歌謡「さわさわに 汝(な)が言へせこそ うち渡す 彌木栄(やがはえ)なす 来入り麻韋久礼(マヰクレ)
[語誌]「まゐ」とカ変動詞「く(来)」との複合動詞。「まゐ」は、「都べに 末為(マヰ)しわが背を」〔万葉‐四一一六〕のように用いられた、「まゐる」(ワ上一)の連用形と思われる。類義語として「まゐりく」がある。中古には「もうく(まうく)」の形が見られる。

もう‐こ まう‥【参来】

(「もうく(参来)」の命令形) こちらへきなさいの意。宮廷儀式の時に用いた。
左経記‐長元四年(1031)七月二日「入立小庭、上宣〈末宇古〉丞高唯」

もう‐・く まう‥【参来】

〘自カ変〙 (「まいく(参来)」の変化した語) 高貴な人のもとや高貴な場所に来る。
書紀(720)継体二三年四月(図書寮本訓)「二の王、自ら来参(マウコ)ず」

まいり‐・く まゐり‥【参来】

〘自カ変〙 参上する。貴人のもとなどへまいる。
伊勢物語(10C前)一一八「昔、をとこ、ひさしくおともせで、忘るる心もなし、まいりこむといへりければ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「参来」の意味・読み・例文・類語

まい・く〔まゐく〕【参来】

[動カ変]貴所へ参上してくる。
板葺いたぶき黒木の屋根は山近し明日の日取りて持ちて―・こむ」〈・七七九〉

もう・く〔まうく〕【参来】

[動カ変]《「まいく」の音変化》高貴な人のもとに来る。参り来る。
「時に兄猾えうかし―・こず」〈神武紀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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