原子力安全推進協会(読み)ゲンシリョクアンゼンスイシンキョウカイ

デジタル大辞泉 「原子力安全推進協会」の意味・読み・例文・類語

げんしりょくあんぜんすいしん‐きょうかい〔‐ケフクワイ〕【原子力安全推進協会】

事業者から独立した立場原子力施設の運営状況や設備状態等を評価し、安全性向上策の提言勧告支援などを行う自主規制組織一般社団法人。日本原子力技術協会を前身とし、平成24年(2012)設立原安進JANSI(Japan Nuclear Safety Institute)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力安全推進協会」の意味・わかりやすい解説

原子力安全推進協会
げんしりょくあんぜんすいしんきょうかい

原子力施設の安全対策を徹底するため発足した民間企業の自主組織。電力会社や原子力発電プラントメーカーなどが加入する一般社団法人である。前身は2005年(平成17)発足の民間自主組織、日本原子力技術協会で、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故を防ぐことができなかった反省にたち、同協会を発展的に解消・改組し、2012年11月に発足した。英語名はJapan Nuclear Safety Instituteで、略称はJANSI。本部は東京都港区芝。2013年11月時点での会員数は121。電力会社などから独立した立場で原子力発電所の運営状況や電力会社の安全対策を点検・評価し、改善点を提言・勧告する。理事会は電力会社やプラントメーカーの経営者ら十数人で構成し、初代の代表には旧・原子力安全委員会委員長を務めた松浦祥次郎(しょうじろう)(1935― )が就任した。

 原子力発電所の設計基準を超えた重大な炉心損傷を起こすシビアアクシデント過酷事故)対策をすべての原子力施設に導入するよう最優先で取り組む。専門家が第三者の立場で原子力施設の運営・設備状況を定期的に確認(ピアレビュー)し、最優良事例と比較して原子力施設ごとに改善策を提言・支援する。また、電力会社など原子力発電事業者の全社長が出席する「事業者社長会議」を年4回開き、直接、社長へ提言や勧告を行う。さらに、世界原子力発電事業者協会(WANO:World Association of Nuclear Operators)などの海外機関の専門家や海外原子力発電事業者との情報交換も行い、世界に通用する最先端の安全対策を把握・習得し、日本国内はもとより、原子力発電の海外輸出にも適用できるように提言する。

 電力業界や原子力関係の専門家の間では、かねてから福島第一原子力発電所は旧式設備で安全対策が不十分であるとの指摘があったにもかかわらず、シビアアクシデントを防ぐことができなかった。このため、原子力安全推進協会の発足は、国の規制を先取りする形で、各電力会社から独立した組織を立ち上げ、業界自ら安全性確保に取り組む姿勢を示したものである。

[編集部]

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