厄日
やくび
よくないことがあると恐れられている日。また特定の行為を忌む日。(1)本来は厳粛な祭り日であったのに、神を迎える緊張感が恐怖の感情と入れ替わり、恐ろしい悪い日となったもの。伊豆諸島で1月24日を日忌(ひいみ)または忌の日(きのひ)というのは、物忌みの変化したものであり、物日(ものび)に衣服を裁つことを忌む地方もある。(2)陰陽道(おんみょうどう)の知識から、吉凶を判断して厄日となったもの。坎日(かんにち)に外出を忌む、友引に葬式を忌む、三隣亡(さんりんぼう)に家屋の建築や旅立ちを忌む、不熟日(ふじゅくにち)・地火(じか)の日に種播(ま)きや植樹を忌むなど、きわめて種類が多く、それぞれに計算法がある。もちろん科学的な根拠はないが、これらを書き込んだ暦も出回っており、いまも気にして守っている人がある。(3)実際に災厄の多い日として恐れられているもの。二百十日や二百二十日などは、ちょうど台風の時期にあたっており、厄日として風祭りをする所が多い。あるいは村や町で大火事のあったようなとき、「焼け年忌(ねんき)」などといって毎年その日を自戒の日としている所もあり、個人的にも、なにかよくないことのあった日を厄日として、身を慎もうとする人もある。
[井之口章次]
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やく‐び【厄日】
〘名〙
① 陰陽道で、厄難にあうから諸事に慎み深くふるまわなければならないとする日。
※小右記‐寛仁三年(1019)八月五日「厄日可二慎給一」
② 農家などで、天候などによる厄難の有りがちであるとする日。二百十日・二百二十日・八朔(はっさく)の類。《季・秋》
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一「二百十日、二百二十日の厄日も事なく過ぎて」
③ (①から転じて) 一般に厄難にあう日。よくないことが重なる日。
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉七〇「
茂助も今日が厄日
(ヤクビ)か、〈略〉吹掛けられし喧嘩避
(よ)けて通し難く」
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厄日
やくび
災厄にあうおそれがあり,それを避けるために忌に服さなければならないとされている日。厄日には,二百十日,二百二十日のように実際に台風シーズンにあたり,生活体験から厄日としているもの,友引,三隣亡,地火 (じか) の日のように,陰陽道から割出された俗信に類するもの,神祭りの日に精進潔斎しなければ災いにあうというおそれから,その日を厄日とするものなどがある。
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厄日【やくび】
暦で災難が起こるとされる日。元来は祭の物忌をする日だが,陰陽道(おんみょうどう)などの影響で吉凶の日ができた。友引に葬式,三隣亡に建築,苗日に田植を避けるなど。また農漁村で二百十日など天災の起こりやすい日をいう。→忌日(いみび)
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デジタル大辞泉
「厄日」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「厄日」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の厄日の言及
【厄】より
…人間の生命や生活の健全と安定をそこなう要因になると考えられている災難・障害に関する心意現象をいう。時間の次元では厄日,厄月,厄年があり,空間的には厄の生ずるという場所があるが,厄をもたらすという神も考えられており,それらを避けるための呪的方法が多く生み出されている。 厄日には暦にもとづく陰陽道によるものが多く,外出を忌む坎日(かんにち),葬式を忌む友引(ともびき),家屋の建築や旅立ちを忌む三隣亡(さんりんぼう),種まきや植樹を忌む不熟日(ふじゆくにち)・地火(じか)の日などがよく知られているが,二百十日とか二百二十日を厄日とする所も多い。…
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