博物誌(ルナールの短文集)(読み)はくぶつし(英語表記)Histoires naturelles

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

博物誌(ルナールの短文集)
はくぶつし
Histoires naturelles

フランスの作家ジュール・ルナールの短文集。1896年刊。故郷シャロン近在の村で自然観察のかたわら書きつづったもの。簡潔な文体で豊かなイメージを描き出す詩的散文45項目(後の版では70項目)を収める。機知ユーモアからなる短文は、たとえば「蝶(ちょう)――二つ折りにしたこの恋文は、花の宛名(あてな)をさがしている」、「蛍――いったい、どうしたんだろう? もう夜の9時なのに、あの家では、まだあかりがついている」、「蛇――長すぎる」など、気がきいていて美しい。ルナールは自ら「イマージュ(映像)の猟人(かりゅうど)」と名のるが、幻視者としての詩情は、俳諧(はいかい)的散文のなかにみごとに開花している。

[窪田般彌]

『岸田国士訳『博物誌』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android