博奕打ち 総長賭博(読み)ばくちうちそうちょうとばく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「博奕打ち 総長賭博」の意味・わかりやすい解説

博奕打ち 総長賭博
ばくちうちそうちょうとばく

日本映画。1968年(昭和43)、山下耕作(やましたこうさく)(1930―1998)監督。昭和初期、博徒一家の総長が倒れ後継者問題が起こる。中井鶴田浩二(つるたこうじ)、1924―1987)は収拾を図るが事態は悪化し、妻(桜町弘子(さくらまちひろこ)、1937― )を自殺させ、兄弟分の松田(若山富三郎(わかやまとみさぶろう)、1929―1992)に刃を向けることになる。こうした事態を生んだ叔父分の仙波(金子信雄(かねこのぶお)、1923―1995)に中井は刃を向ける。仙波の非難に対して中井は、自分には任侠道(にんきょうどう)などはなく、ただの人殺しだといい仙波を殺す。当時の任侠映画に不満を抱いていた山下と脚本の笠原和夫による本作は、任侠道への疑問を投げかけている。プログラム・ピクチャーの枠内における挑戦ともいえるが、結果的に東映任侠映画の代表的な一本と位置付けられる。なお、三島由紀夫が絶賛したことも本作への評価に無視できない影響を与えている。

[石塚洋史]

『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』『佐藤忠男著『日本映画史3』増補版(2006・岩波書店)』『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 下』(社会思想社・現代教養文庫)』『文芸春秋編『日本映画ベスト150――大アンケートによる』(文春文庫ビジュアル版)』『笠原和夫著『破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂歌(レクイエム)』(幻冬舎アウトロー文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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