単語
たんご
一つのまとまりある意味を表し、独立した形で文法的働きをもつ言語の最小単位。単に「語」ともいう。語は、ローマ字のような表音文字表記の場合は、余白によって区分される単位として扱われる。Neko ga iru.は3語からなる文である。単語は一つのまとまりある意味をもつから、同じ「カワ」でも、水の流れる「川」と動植物の外側を覆う「皮」では意味が違うので、異なる語である。独立した形という点に問題がある、否定を意味するnaiも、kakanai「書かない」では語の一部をなす語尾であるが、takaku nai「高くない」では独立した語となる。kaka-naiのkaka-の部分は単独で発話をつくることのできない結合形式の形態素であって、次にくる-naiと結合してkakanaiの1語となる。したがって、この場合の-naiも独立性を失った語尾とみなされる。これに対し、takakuのほうは単独で発話として用いられるから自由形式である。そこで、takaku naiは2語からなる句である。このように、同じnaiが、語となる場合と語として扱われない場合とがある。その区別は分離性による。二つの要素の間に他の要素が挿入されれば、分離性があることになる。mo「も」という語をこれら二つの要素の間に差し入れてみると、kakamonaiとはいえないが、takaku mo naiとはいうことができる。すなわち、kakanaiのnaiは分離性がないので語ではなく、否定の語尾にすぎない。takaku naiのほうのnaiは分離性があるから語の資格をもつので、takakuとnaiの間に語の切れ目の余白を入れる。同じ規準からtonari no ko「隣の子」は3語からなる句であるが、takenoko「たけのこ」は1語である。「隣の小さい子」とはいえても、「たけの小さいこ」とはいえない。単語は文法的機能をもつ。「タカイ」「タカサ」における「イ」は形容詞を、「サ」は名詞を表す結合形式の形態素であって、これら語尾と結合した「タカイ」は形容詞、「タカサ」は名詞として文法的に働く。
[小泉 保]
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単語
たんご
word
単に「語」ともいい,文と並ぶ文法の基本的単位。しかし,その定義および認定は,意味,形,職能のいずれに重点をおくかによって異なる。ほぼ共通に認められる点は,意味の面,アクセントなどの音形の面で一つの単位としてのまとまりをもち,職能的にもほかの単語がなかに割込むことがなく,内部要素の位置を交換することが不可能で,常にまとまってほかの単語と文法的関係をもつことであろう。また,正書法で分ち書きを行う際には,単語がその基本単位となるのが普通。日本語文法では,おもに学校文法でいう「助詞」「助動詞」「形容動詞」を単語とするか否かの認定で説が分れる。橋本進吉らは3つとも1単語,山田孝雄,時枝誠記,服部四郎,渡辺実らは「助動詞」の一部と「助詞」の大部分を単語,「形容動詞」は2単語,松下大三郎らは「助詞」「助動詞」とも単語以下の単位,「形容動詞」は1単語で動詞の一種とみなす。
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単語【たんご】
言語の単位の一つ。一つのまとまった意味をもち,文の構成成分となる。言語の最小自立単位。文を直接構成するのは文節であるとする立場では,単語は文節を直接構成する有意義の成分とされる。形態や意味を基準とすれば,名詞,動詞などの品詞に分けることができる。→複合語
→関連項目語幹|語根|語尾|シンタクス
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たん‐ご【単語】
〘名〙
① ただ一つの語。〔音訓新聞字引(1876)〕
② 文法上で、意味・職能を有する最小の言語単位。その認定の仕方は、学者によって必ずしも同一ではない。→
複合語。
※小学読本(1873)〈
榊原芳野〉一「書中所有単語を分類して巻首に掲ぐる者は」
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デジタル大辞泉
「単語」の意味・読み・例文・類語
たん‐ご【単語】
文法上、意味・職能をもった最小の言語単位。例えば「鳥が鳴く」という文は、「鳥」「が」「鳴く」の三つの単語からなる。日本語では自立語・付属語に大別される。
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たんご【単語】
ことばの最も基本的な単位として,我々が日常的・直観的に思い浮かべるのが単語である。そして我々はこの単語を一定のルールに従って結合させ,より大きな単位である文を構成し,それを表出することによって,他人との間にコミュニケーションを成立させているのである。したがっていわばことばの基本的な〈駒〉として,日頃用いる辞典は単語を集めその意味を記したものという意識があるし,外国語の学習にあたっても,何はともあれ一定数の単語の習得が養成されるのである。
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世界大百科事典内の単語の言及
【言語】より
…人間同士の意思伝達の手段で,その実質は音を用いた記号体系である。〈ことば〉ということもあるが,〈ことば〉が単語や発話を意味する場合がある(例,〈このことば〉〈彼のことば〉)ので,上記のものをさす場合は,〈言語〉を用いた方が正確である。また,人間以外のある種の動物の〈言語〉をうんぬんすることも可能ではあるが,その表現能力と,内部構造の複雑さおよびそれとうらはらの高度な体系性などの点で,人間の言語は動物のそれに対して質的なちがいを有している。…
【シンタクス】より
…言語学の術語。単語が結びついて文を構成する場合の文法上のきまり,しくみ。また,それについての研究,すなわち文の文法的構造の研究。…
【日本語】より
…こうした敬語法は朝鮮語に見られるだけである(例:等称mɔ
‐ne〈たべる〉,上称mɔk‐sɯmnida〈おたべになる〉)。他にインドネシア語やタイ語,ベトナム語,ビルマ語のような東南アジアの諸語でも敬語は使用されているが,例えばタイ語の普通体はkin〈たべる〉であり,僧侶に対してはchǎn〈召し上がる〉を用いるといったように,原則的に別な単語が用意されている(なお,日本語でもこの場合の〈召し上がる〉といったような,別の単語が用意される場合もあるが,基本的には先にあげたような同一単語の形態的変化によっている)。こうした敬語法は東洋のモンスーン地帯に発達していて,朝鮮を除く大陸の諸言語には見られない現象である。…
【品詞】より
…文法用語の一つ。それぞれの言語における発話の規準となる単位,すなわち,文は,文法のレベルでは最終的に単語に分析しうる(逆にいえば,単語の列が文を形成する)。そのような単語には,あまり多くない数の範疇(はんちゆう)(カテゴリー)が存在して,すべての単語はそのいずれかに属している。…
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