単位制(読み)たんいせい

精選版 日本国語大辞典 「単位制」の意味・読み・例文・類語

たんい‐せい タンヰ‥【単位制】

〘名〙 卒業や進級を、修得した各教科の学習時間数を基にした量的計算によって行なう制度。科目の選択制をたてまえとした高等学校・大学で行なわれている。→単位

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大学事典 「単位制」の解説

単位制
たんいせい

学修時間量に換算できる単位の累積加算によって卒業資格の認定を行う制度。

[単位制の意味]

履修内容をどのように認定するかについては,大きく学年制と単位制の二つの考え方がある。学年制では学年ごとに履修すべき科目が指定されており,指定された科目のうち一つでも不合格になると上の学年に進級できない。翌年度に再履修する場合,不合格になった科目以外の全科目を再度履修しなければならない。一方,単位制では一定の年限の中で履修すべき科目の単位を揃えればよい。ある科目で不合格になった場合でも,他科目の履修単位が無効になることはない。

 学年制は日本だけでなく多くの国の義務教育段階で取り入れられている制度であり,生徒に履修内容を体系的かつ確実に学修させるのに適している。履修科目は基本的にすべて必修であることが前提となる。これに対して,単位制は高等教育機関で広く普及している制度である。履修科目は必修科目と選択科目からなり,学修者は科目ごとに提供されている授業(単位制)の中から,自身の関心に沿う授業を選択して学ぶ。つまり,単位制は学修者の知的関心や意欲が一定程度備わっている場合に,これをさらに深化させるのに適している。反面,学修者の知的関心や意欲が低い場合は,選択科目を有機的に組み合わせることは容易でなく,体系性を欠く「つまみ食い」のような時間割(単位制)を組んでしまう危険性がある。また,卒業のために単位を取得すること自体が目的化すると,単位をとりやすい授業を選択する傾向が強くなり,学修活動が必ずしも促進されるとは限らない。その意味で,単位制度は学修者の主体性と知的成熟度に大きく依存する履修制度であると言える。

[単位制の仕組み]

単位制の根拠となるのは大学設置基準(文部科学省令)である。同基準によると,21条2項「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成する」「講義(単位制)及び演習(単位制)については,十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする」,22条「一年間の授業を行う期間は,定期試験等の期間を含め,三十五週にわたることを原則とする」,23条「各授業科目の授業は,十週又は十五週にわたる期間を単位として行う」と定められている。これらの規定により,日本の多くの大学では1回90分前後の毎回の授業を2時間分とみなし,その倍に相当する4時間分の予習復習(単位制)を学生が自主的に行うと仮定し,これを15週実施した上で定期試験を行い,合格すれば計90時間分の学修量に対して2単位を与えている。

 大学を卒業するためには,124単位以上を修得することが求められる(同基準32条,ただし,医学・歯学・薬学および獣医学を除く)。その積算根拠は次の通りである。1週間に1単位=45時間相当を履修(単位制)すると仮定し,週1単位×15週×2学期×4年間で合計120単位となる。これに以前は課外活動分としてみなされていた体育の4単位分を加えると124単位になる。週あたり1単位分の学修時間,すなわち授業15時間と授業時間外学修30時間の合計45時間は,労働者の週あたり労働時間に相当する。これは学修活動を労働の代替行為としてみなす考え方に基づいている。

[単位制の問題点]

ところが,日本の大学生の学修実態は単位制度のこうした理念とは大きくかけ離れている。ベネッセ教育総合研究所が2012年11月に実施した「第2回 大学生の学習・生活実態調査」によれば,1週間に大学生が授業の予復習や課題に充てる時間が1時間未満と回答した割合は42.9%に達する。回答者の平は2.8時間であり,1日あたりでは0.4時間すなわち24分である。かといって,90分の授業を1日3コマ分履修すると(6時間相当),単位を取得するためには12時間分の予習・復習が必要となる。睡眠通学,課外活動など日常生活に要する時間を考慮すれば,この前提は非現実的である。

 では,なぜこうした状況が起きるのか。第1に,大学新入生は時間割(単位制)の空き時間を活用して予習・復習の時間を確保するという大学教育の考え方になじみが薄く,高校時代までと同様に時間割いっぱいに授業を詰め込みたがる傾向が強い。第2に,大学生は4年生になると就職活動に忙しいので,必要な単位は3年生までに揃えておきたいとする意識が強くはたらく。4年間で履修すべき内容を実質的には3年間で詰め込むので,時間割はますます過密になる。

 中央教育審議会の答申等で繰り返し強調されている「単位の実質化」とは,大学生が授業時間外で自発的に学修を行うことを大学がさまざまな方法によって促進・支援することにより,有名無実化している単位制度を機能させようという趣旨である。たとえば,多くの大学では学生による単位の「早取り」傾向を抑制するために,1年間あるいは1学期に履修できる単位の上限を設定する制度(キャップ制)を導入するなどの方策を講じている。
著者: 近田政博

参考文献: 中井俊樹・上西浩司『大学の教務Q&A』玉川大学出版部,2012.

参考文献: ベネッセ教育総合研究所「第2回 大学生の学修・生活実態調査」:http://berd. benesse. jp/berd/center/open/report/daigaku_jittai/2012/dai/index. html

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「単位制」の意味・わかりやすい解説

単位制
たんいせい

単位を基準として学習・履修量を測定する制度。日本では、大学をはじめとする高等教育機関のほか、高等学校においても採用されている。法規に基づいて、各高等学校や大学等は卒業に必要な要件の一つとして所定の単位数を定めている。生徒や学生には、標準的な学修時間を基に単位化された必修・選択の科目を履修させ、授業科目の履修ごとに単位取得認定を行う。これと対照的な仕組みは、教育課程が学年ごとに区分され、学年ごとに課程の修了認定が行われる学年制である。

 高等学校学習指導要領は、1単位時間を50分として年間35単位時間の授業を1単位とし、卒業には74単位以上が必要と定めている。一般的に高等学校では学年制と併用して単位制が採用されており、単位は学年制のもとでの生徒の学習量を表示するにとどまる。ただし、1990年代後半以降、単位制高等学校の設置数が増加している。自分のペースや興味・関心に応じて学習できることが単位制の大きな利点である。

 大学では、大学設置基準第21条で、1単位の授業科目を、45時間の学修(授業時間外学修を含む)を必要とする内容で構成すると定められている。このうち授業時間については、以前は、1単位あたり講義・演習は15~30時間、実験・実習・実技は30~45時間と区分されていたが、授業方法の多様化を背景に、2022年(令和4)以降は、おおむね15~45時間の範囲で大学が定める授業時間をもって1単位とされている。卒業には124単位以上の修得のほか、大学が定めることとされている(同基準32条)。

[奥田修史・浜田博文 2023年3月17日]

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百科事典マイペディア 「単位制」の意味・わかりやすい解説

単位制【たんいせい】

学科を単位数で表し,一定の要求された学科の単位数の習得によって卒業を認める制度。選択履修制の産物で,学年制に対する。日本では高校・大学で採用され,学年制併用が多い。高校では各科目につき1単位時間を50分とし,1学年35単位時間で1単位,卒業には80単位以上必要。大学では1単位は,講義は毎週1時間・15週,演習は毎週2時間・15週などが原則で,卒業には124単位以上必要。→単位制高校

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