南蛮吹(読み)なんばんぶき

精選版 日本国語大辞典 「南蛮吹」の意味・読み・例文・類語

なんばん‐ぶき【南蛮吹】

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改訂新版 世界大百科事典 「南蛮吹」の意味・わかりやすい解説

南蛮吹 (なんばんぶき)

南蛮絞りともいう。古来,日本の銅鉱石には銀が含まれていたが,銅から銀を取り除く技術がなかった。室町時代には銅は日本の輸出品のおもなもので,銀を除く技術をもつ中国には格安の品として受け入れられていた。1591年(天正19)ころ,住友氏の祖,蘇我理右衛門が泉州堺で南蛮人より銅から銀を分離回収する方法を伝えられたという。この方法は住友家で1804-05年(文化1-2)ころ刊行した《鼓銅図録》に詳しく記されている。まず銀を含む銅を鉛と混ぜて溶かし合わせる(合せ吹き)。次にこれを土で築いた南蛮炉に入れ,炭を加えて,ふいごで送風しながら,全部が液体にならない程度に加熱する。融点の高い銅は残り,融点の低い鉛は銀を溶かして下から流れ出る。この過程を南蛮吹という。この鉛と銀の合金を灰床に入れ,炭を入れてふいごでゆるく吹くと,鉛は灰の中にしみ込んで銀のみが炉内に残る(灰吹き)。こうして得られた銀を灰吹銀という。この方法は明治時代に入り電解精製が行われるまで続けられた。灰吹法は今日でも行われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南蛮吹」の意味・わかりやすい解説

南蛮吹
なんばんぶき

銀を含有する粗銅から銀を分離する精錬法。南蛮絞(しぼり)ともいう。大坂の豪商住友家の祖政友(まさとも)の義兄である蘇我理右衛門(そがりえもん)が1591年(天正19)ごろ泉州堺(さかい)で、銀を抜く新技術(南蛮吹)を南蛮人から伝授されたといわれる。銀を含む粗銅に鉛を加えて溶かし合わせ(吹銅)、銅と鉛の溶解度比重の差を利用して銀を含んだ鉛を分離する(南蛮吹)。さらに灰吹法により含銀鉛から銀だけを分離して取り出すという方法である。住友家が編集発行した『鼓銅図録(こどうずろく)』(1804ころ)に詳しく述べられている。

内田 謙]

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世界大百科事典(旧版)内の南蛮吹の言及

【銅】より

…江戸時代は諸国銅山の荒銅は大坂に回送され,大坂の吹屋で鉸銅(しぼりどう),間吹銅に吹き,これを輸出用の棹銅や地売用の丁銅,丸銅,長棹銅その他,種々の型銅に小吹した。荒銅には銀を含むものが多いので南蛮吹によって灰吹銀を抜きとるが,抜銀された銅を鉸銅という。しかし含銀の少ない荒銅は南蛮吹せず間吹して吹銅とする。…

※「南蛮吹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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