南房総(市)(読み)みなみぼうそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「南房総(市)」の意味・わかりやすい解説

南房総(市)
みなみぼうそう

千葉県南部、房総半島にある市。2006年(平成18)、安房(あわ)郡富浦町(とみうらまち)、富山町(とみやままち)、白浜町(しらはままち)、千倉町(ちくらまち)、丸山町(まるやままち)、和田町(わだまち)、三芳村(みよしむら)が合併して市制施行、南房総市となった。市名は房総半島南部をさす広域地名南房総からとった。しかし、当市を含む安房地域の地理的・経済的な中心は南接する館山(たてやま)市で、とくに商業、医療面などは同市に依存。ただし和田地区は北接する鴨川市との結びつきが強い。西は浦賀水道、東から南は太平洋に臨む。JR内房線は市域西部の海岸沿いを南下して館山市域に入り、内陸部を横断、千倉から東部の海岸沿いに北上して鴨川市域に抜ける。西部海岸線を国道127号が、その内陸側を富津館山道路が通じ、富浦インターチェンジがある。南部、東部には国道410号、128号(外房黒潮ライン)が通る。

 市内の府中(ふちゅう)には古代の安房国府が置かれたと推定される。平安時代中期から末期、丸山(まるやま)川沿いに開けた河岸段丘沖積平野は源氏の所領で、1159年(平治1)源頼朝の昇進を祈念して伊勢神宮へ寄進され、丸御厨(まるのみくりや)が成立。同御厨の開発領主とみられる丸氏は、丸本郷(まるほんごう)の丸城に拠り、室町―戦国期には里見氏の配下として活躍。また岡本(おかもと)川河口右岸の海にせり出した尾根の先端、富浦町原岡(はらおか)には里見氏の本城、岡本城があった。岡本城跡は館山市稲の稲村城跡とともに里見氏城跡として国指定史跡。

 現在、西部海岸の富浦漁港、高崎漁港、東部海岸の千倉漁港、和田漁港、白子漁港、野島漁港などでの漁業が盛ん。カツオ、サバ、カジキマグロ漁、アワビ、サザエや海藻類の採取、タイ、ハマチの養殖などが行われる。内陸部ではビワ、メロン、柑橘類、花卉(かき)類の栽培、酪農などが主。房州ビワの発祥地とされる富浦町地区では江戸後期には仲買を通じて江戸に運び、販売していたという。海岸部は南房総国定公園に指定され、海水浴客などを対象とする民宿経営も盛ん。面積230.12平方キロメートル、人口3万5831(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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