南インド洋漁業協定(読み)みなみいんどようぎょぎょうきょうてい(英語表記)Southern Indian Ocean Fisheries Agreement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「南インド洋漁業協定」の意味・わかりやすい解説

南インド洋漁業協定
みなみいんどようぎょぎょうきょうてい
Southern Indian Ocean Fisheries Agreement

南インド洋公海における漁業資源の持続可能な利用を目的とする協定。2006年7月7日に採択され、2012年6月21日に発効した。英文名称の略称であるSIOFAが用いられることもある。2021年7月時点で、日本、オーストラリア、中国、クック諸島レユニオン(フランス領)、モーリシャスセイシェル、韓国、タイ、台湾、ヨーロッパ連合(EU)の10か国・地域、1機関が加盟。

 この協定成立の背景として、オーストラリア西部からアフリカ東部に及ぶ南インド洋においては、近年、沿岸諸国に加えて、ニュージーランド、クック諸島、日本などが、キンメダイオレンジラフィー(ミナミヒウチダイ)を対象に遠洋底魚漁業を拡大したことがある。そのため、それら深海魚種についてIUU(違法・無報告・無規制)漁業の防止と国際的管理のため、南西インド洋漁業開発・整備委員会を廃止するとともに、対象海域を拡大して新たな地域漁業機関を設立することが求められた。なお、マグロについてはインド洋まぐろ類委員会協定(1996年発効)による保存管理措置が適用されていたため、2001年以降、国連食糧農業機関FAO(ファオ))の下で、関係する沿岸国および遠洋漁業国が参加して、マグロ以外の魚種の保存管理について政府間協議が始められた。

 この協定は、既存の地域漁業協定と同様に、最良の科学的証拠に基づき、生物多様性の保全、予防的な対応、MSY(最大持続可能生産量)水準の維持などを原則としている。その対象からは、高度回遊性魚種および沿岸国管轄下の定着性魚種は除かれる。具体的な保存管理措置は、締約国会議によって策定される。遠洋漁業国は、自国漁船がその保存管理措置を遵守するよう確保しなければならない。他方で、寄港国は、保存管理措置に反する方法による漁獲物に対して、陸揚げ・転載の許可またはサービスの提供をしてはならない。

 ちなみに、この協定に日本が加入する前の時期の、日本漁船による南インド洋でのキンメダイ漁獲量は、2009年が1205トン、2012年が295トンであった。それは、日本が重視していた北太平洋でのキンメダイ漁獲量、2009年が1080トン、2012年が773トンに匹敵していた。

 日本国内では、2014年(平成26)6月17日の加入書寄託、6月20日の公布を経て、7月17日に発効した。

[磯崎博司 2021年10月20日]

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