半靴(読み)はんぐつ

精選版 日本国語大辞典 「半靴」の意味・読み・例文・類語

はん‐ぐつ【半靴】

〘名〙
① 昔の靴で、深靴よりもたけの低いもの。鹿のなめし革で作り、黒漆を塗ったもの。騎馬で供奉する時などに用いる。はんか。ほうか。
太平記(14C後)二四「半靴(はんクツ)(は)いて、二騎充左右に打並たり」
足首から下だけはいる、浅い西洋風の靴。現在の短靴をいう。
歌舞伎霜夜鐘十字辻筮(1880)序幕「茶無地の羽織木綿の襠高袴半靴(ハングツ)忍び廻りのこしらへにて」
足袋(たび)の一種。足袋沓(ぐつ)のこと。ゆび先がわれていないのが特色
洒落本傾城買指南所(1778)「たびはかきいろか、それも花色の半くつさ」

ほう‐か ハウクヮ【半靴】

〘名〙 (「はんか(半靴)」の変化した語) 公家装束の靴(か)の沓(くつ)靴帯(かたい)を省略した靴。略儀の際の馬上用のはきもの。はんぐつ。
※枕(10C終)一二〇「ふかぐつ、はうくゎなどはきて、廊の程、沓すり入るは、内裏わたりめきて、またをかし」

はん‐か ‥クヮ【半靴】

〘名〙 =はんぐつ(半靴)①〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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デジタル大辞泉 「半靴」の意味・読み・例文・類語

はん‐ぐつ【半靴】

足首から下を入れてはく浅い靴。短靴。
釦留ボタンどめの―を脱いで」〈風葉青春
ほうか(半靴)」に同じ。
「―いて、二騎づつ左右に打ち並びたり」〈太平記・二四〉

ほう‐か〔ハウクワ〕【半靴】

《「はんか」の音変化》くつから靴帯かたいを除いて簡略化したもの。略儀の際の乗馬用の履物。はんぐつ。

はん‐か〔‐クワ〕【半靴】

ほうか(半靴)

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世界大百科事典(旧版)内の半靴の言及

【くつ(沓∥履)】より

…靴は立てあげのあるなめし革のくつで,武官の礼服に用いた。半靴(ほうか)は靴を簡略にしたもので,靴先をとがらせ,靴帯(かたい)を省き,平安時代から武士が乗馬に用いた。鞋には,錦鞋(きんかい),挿鞋(そうかい),糸鞋(しかい),草鞋(わらぐつ)がある。…

【束帯】より

…袍の上から革帯(かくたい)を締めるが,石帯とか玉帯といわれ,後ろ腰に当たる部分に石や玉の飾りがついている。履に数種あり,浅沓(あさぐつ)は平常用とし,靴(か)は儀式や行事に,深沓は雨泥の日に,半靴(ほうか)は乗馬のとき,挿鞋(そうかい)は天皇が殿上ではく沓,糸鞋(しかい)は幼童や舞楽に用いられる。(しとうず)はいわゆる靴下である。…

※「半靴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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