半規管(読み)ハンキカン

デジタル大辞泉 「半規管」の意味・読み・例文・類語

はんき‐かん〔‐クワン〕【半規管】

脊椎動物内耳にある平衡感覚器の一部半円半規)をなし、円口類は1~2個もつが、そのほかでは3個あるので、三半規管という。

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精選版 日本国語大辞典 「半規管」の意味・読み・例文・類語

はんき‐かん ‥クヮン【半規管】

〘名〙 脊椎動物の内耳の主要器官である、膜迷路を構成する一器官。平衡感覚をつかさどる器官で、円口類では一個、ヤツメウナギでは二個。円口類を除く脊椎動物では通嚢より三個の半円形のものが互いに直角になるように突き出しているので三半規管とよばれる。根元の膨大部にはせん毛をもった感覚細胞が並び、その中に含まれるリンパ液の流れによって平衡感覚を知る。
解体新書(1774)二「蝸牛殻。向之者、三之半規管也」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「半規管」の意味・わかりやすい解説

半規管
はんきかん

脊椎(せきつい)動物の平衡感覚器の一部で、ヒトでは側頭骨岩様(がんよう)部の内部にある内耳の膜迷路に属する構造物である。膜迷路は、これとまったく同じ形の骨迷路に囲まれ、完全に閉じられた管構造である。迷路の後方が半規管を形成している。迷路の中央部には卵形嚢(のう)と球形嚢とよぶ構造があり、この両者と半規管とで平衡覚部を構成している。半規管は、前半規管、後半規管、外側半規管の3本からなっており、これを三半規管という。いずれの管もC字形で、互いに直角となる方向を向いており、それぞれの管の両端は卵形嚢に開いている。前半規管は側頭骨の錐体(すいたい)の長軸に直角方向、後半規管はこの長軸と平行方向、外側半規管は水平面で外側方向に向いている。半規管の太さは直径0.3~0.5ミリメートルで、半規管の内腔(ないくう)にはリンパ液が満たされている。各管が卵形嚢に開口する部分には、各管に1個ずつの膨大部があり、この部分の内面にはC字形の高まりがある(これを膨大部稜(りょう)とよぶ)。膨大部稜には感覚上皮が配列しており、管腔内のリンパ液の流れによって感覚上皮が刺激されると、体の回転感覚が生じる。

 脊椎動物の場合、半規管は円口類の1~2個を除くと、ほかはすべて三半規管となる。骨半規管は膜半規管とまったく同形であり、前・後・外側半規管を備えているが、その太さは膜半規管の4~5倍である。骨半規管は、5個の開口部で前庭とよばれる部分に開口するが、この前庭には卵形嚢と球形嚢とが収まっている。

[嶋井和世]


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百科事典マイペディア 「半規管」の意味・わかりやすい解説

半規管【はんきかん】

脊椎動物の内耳にある平衡器官。ふつう3個の互いに直交する半環状の管がかたい骨質に囲まれているので三半規管と呼ばれるが,ホソヌタウナギでは1個,ヤツメウナギ類では2個しかない。各管の一端はふくれて膨大部をつくり,ここに感覚上皮細胞があって,管中のリンパの動きをとらえ,運動特に回転を感受する。前庭神経で脳と結ばれる。
→関連項目内耳平衡感覚めまい

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「半規管」の意味・わかりやすい解説

半規管
はんきかん
semicircular canals

三半規管ともいう。脊椎動物の内耳にあり,平衡感覚を司る器官。半環状の3つの管があり,それぞれ前半規管,外側半規管,後半規管という。これら3つの半規管は,互いに直角をなす面上にあり,この配列によって三次元空間における運動の方向が感知されると考えられる。それぞれの管の一部はふくらんで膨張部を形づくり,内部を内リンパが満たしている。この液の流動が,膨大部に集る感覚上皮細胞によって感じられ,前庭神経を経て脳に伝えられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「半規管」の意味・わかりやすい解説

半規管 (はんきかん)

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世界大百科事典(旧版)内の半規管の言及

【三半規管】より

…耳のいちばん奥にある内耳の一部を形成している三つの管状器官。内耳には音を感ずる蝸牛,身体の平衡感覚に関係する前庭・三半規管がある。前庭vestibuleが直線加速度・重力・遠心力などを感受するのに対し,三半規管は回転加速度刺激を感受している。…

【耳】より

…内耳は刺激を受容する中心的部分で,最も奥深く位置し,進化的にみて最も由来が古く,すべての脊椎動物が例外なく備えるものである。内耳の実質をなすのは〈迷路〉と呼ばれる複雑な囊状の構造で,これは動物のグループによってかなり異なるが,一般的には〈卵形囊〉とそれに付属した半円形の管である〈半規管〉,および〈球形囊〉とそれから伸びた〈蝸牛(かぎゆう)管〉という4部の中空の小囊から成る(ただし下等脊椎動物は蝸牛管をもたない)。卵形囊と球形囊は内耳の中心部をなし,これらをあわせて〈前庭〉という。…

※「半規管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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