半井桃水(読み)なからいとうすい

精選版 日本国語大辞典 「半井桃水」の意味・読み・例文・類語

なからい‐とうすい【半井桃水】

小説家対馬の人。本名(きよし)別号、菊阿彌。明治二一年(一八八八東京朝日新聞記者となり、多数新聞小説執筆。また、俗曲の作詞家としても知られる。樋口一葉小説の手ほどきをし、その関係によって文学史に名をとどめる。著「天狗廻状」など。万延元~大正一五年(一八六〇‐一九二六

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「半井桃水」の意味・読み・例文・類語

なからい‐とうすい〔なからゐタウスイ〕【半井桃水】

[1861~1926]小説家。対馬つしまの人。本名、きよし朝日新聞の記者となり、通俗小説発表門下樋口一葉がいた。作「海王丸」「天狗廻状」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

朝日日本歴史人物事典 「半井桃水」の解説

半井桃水

没年:昭和1.11.21(1926)
生年:万延1.12.2(1861.1.12)
明治大正時代の小説家。本名洌,別号桃水痴史,菊阿弥。対馬国府中(長崎県厳原町)生まれ。藩主宗家の典医半井湛四郎・藤の長男。11歳で上京,共立学舎に学び,財閥三菱に就職したが退社して,京都を放浪。明治13(1880)年『魁新聞』の創刊と共に同新聞社に入社し,廃刊後,父が医院を開いていた釜山に渡る。16年成瀬もと子と結婚したが,翌年死別。21年東京朝日新聞社に入社,「唖聾子」(1889)で好評を博し,小説記者として「胡沙吹く風」(1891~92)などを発表。樋口一葉と文学の師として交際があり,一葉の『にごりえ』(1895)の結城朝之助は桃水をイメージしたものである。<参考文献>「半井桃水」(近代文学研究叢書25巻)

(佐伯順子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

百科事典マイペディア 「半井桃水」の意味・わかりやすい解説

半井桃水【なからいとうすい】

小説家。本名冽(きよし)。対馬国(現長崎県)生れ。11歳で上京,共立学舎で学ぶ。新聞社を転々としたが,1888年《東京朝日新聞》記者となり,翌年から《唖聾子》《海王丸》などを連載,通俗小説作家として名声を博した。《胡砂(こさ)吹く風》(1891年―1892年)が代表作。のち《大阪朝日新聞》に移り,《天狗廻状》などを連載。樋口一葉の小説の師であり,またその恋愛対象でもあったとする説がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「半井桃水」の解説

半井桃水 なからい-とうすい

1861*-1926 明治-大正時代の小説家。
万延元年12月2日生まれ。大阪魁(さきがけ)新聞社などをへて,明治21年東京朝日新聞社にはいり連載小説をかく。樋口一葉(ひぐち-いちよう)の師,恋人として知られる。俗曲も作詞した。大正15年11月21日死去。67歳。対馬(つしま)(長崎県)出身。本名は冽(きよし)。別号に菊阿弥,千壺。作品に「胡沙(こさ)吹く風」「天狗(てんぐ)廻状」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の半井桃水の言及

【一葉日記】より

樋口一葉が,1887年(明治20),16歳のときから終焉の年までの約10年間にわたって書きついだ生活記録で,途中脱落はあるが,メモや雑記を含めると七十数冊に及んでいる。半井(なからい)桃水との恋にちなむ〈若葉かげ〉〈しのぶぐさ〉をのぞけば,菊坂町時代が〈蓬生〉,竜泉寺町時代が〈塵の中〉,丸山福山町時代が〈水の上〉というように,ほぼ居住地べつに三つのタイトルがえらばれている。菊坂町での作家修業と桃水への愛,竜泉寺町時代の生活の苦闘,晩年の達観した心境と文壇人との交友など,一葉の創作の舞台裏をかいま見せてくれるばかりでなく,明治の女書生のヒューマン・ドキュメントとしても深い感銘を誘う。…

【樋口一葉】より

…同門の田辺花圃(かほ)が《藪の鶯》を発表して文壇に迎えられたことに刺激されたといわれる。91年《東京朝日新聞》の専属作家半井(なからい)桃水の門をたたいて小説制作の指導を乞い,翌年桃水が主宰する雑誌《武蔵野》第1号に処女作《闇桜》を発表した。その後1年足らずの間に,幸田露伴の作風を模した《うもれ木》を含む7編の短編を公にするが,その多くは和歌的な抒情の世界になずんだ習作の域を出ていない。…

※「半井桃水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android