千早振る(読み)チハヤブル

デジタル大辞泉 「千早振る」の意味・読み・例文・類語

ちはや‐ぶる【千早振る】

[枕]《動詞「ちはやぶ」の連体形から》勢いが激しい意で、「神」、また、地名宇治うぢ」にかかる。
「―神世も聞かず竜田川から紅に水くくるとは」〈古今・秋下〉
「―宇治の渡り滝屋たきつやの」〈・三二三六〉
[補説]「ちはやぶる」「ちはやひと」は、勢いが激しい強大な「うぢ」の意から、同音の「宇治」にかかるようになったといわれる。

ちはやふる【千早振る】

落語百人一首にある歌「千早振る神世かみよも聞かず竜田川たつたがわからくれないに水くくるとは」の意味を問われた隠居が、知らないとは言えず、でまかせの解釈を語り出す。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「千早振る」の意味・わかりやすい解説

千早振る
ちはやふる

落語。別名を「百人一首」というが、もとは『竜田川(たつたがわ)』という上方咄(かみがたばなし)で、初代桂(かつら)文治の作。知ったかぶりの横町の隠居が「千早振る神代(かみよ)もきかず竜田川からくれないに水くくるとは」という百人一首の歌の意味を八五郎に聞かれ、隠居は口から出任せに以下の物語を展開する。竜田川という大関が千早という花魁(おいらん)に惚(ほ)れたが振られ、妹女郎の神代もいうことを聞かないので「千早ふる神代もきかず竜田川」。失望した竜田川は帰郷して豆腐屋になり、10年後、女乞食(こじき)が卯(う)の花(おから)をくれといったのでやろうとすると、それが千早のなれの果て。竜田川は怒っておからをやらず、恥じた千早が井戸へ身を投げて死んだので「からくれないに水くぐるとは」。八五郎が最後の「とは」の意味を聞くと、「とはは千早の本名だ」とサゲる。『やかん』と同工異曲の無学者は論に負けずという咄で、「無学者」「無学者論」という別名もある。

[関山和夫]

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デジタル大辞泉プラス 「千早振る」の解説

千早振(ちはやふ)る

古典落語演目ひとつ。「百人一首」「無学者」「無学者論」「竜田川」とも。五代目古今亭志ん生が得意とした。オチは間抜オチ。主な登場人物は、隠居、職人在原業平短歌「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」を題材にしたもの。

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