十翼(読み)じゅうよく(英語表記)Shí yì

精選版 日本国語大辞典 「十翼」の意味・読み・例文・類語

じゅうよく ジフヨク【十翼】

易の経文に付属し、これを補翼する一〇編の書。彖(たん)上下・象(しょう)伝上下・繋辞(けいじ)伝上下・文言(ぶんげん)伝・説卦(せっか)伝・序卦伝雑卦伝のこと。経文を解説するほか、易の意義成立の次第、筮(ぜい)法などを述べる。古来孔子の作と伝えられ、易経という場合には、経文のほかに十翼を含めていう。
菅家文草(900頃)一・仲秋釈奠、聴講周易、賦鳴鶴在陰「縦使清声千万和、不十翼豈高聞」 〔文心雕龍‐宗経〕

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デジタル大辞泉 「十翼」の意味・読み・例文・類語

じゅうよく〔ジフヨク〕【十翼】

易経」の解釈書。経の本文を補翼する10編の書の意で、彖伝たんでん(上・下)、象伝しょうでん(上・下)、繋辞伝けいじでん(上・下)、文言伝、説卦伝せっかでん序卦伝じょかでん、雑卦伝の10編からなる。孔子の著とされてきたが、成立は戦国時代から代のころ

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改訂新版 世界大百科事典 「十翼」の意味・わかりやすい解説

十翼 (じゅうよく)
Shí yì

易経》の注釈(伝)。彖(たん)伝(上下),象伝(上下),繫辞(けいじ)伝(上下),文言伝,説卦(せつか)伝,序卦伝,雑卦伝の10編あるのでこう呼ぶ(翼はたすける意)。旧社会の儒者たちは,八卦と六十四卦は伏羲ふくぎ),卦辞(各卦に付された占断の辞)は文王,爻(こう)辞(各卦の各爻に付された占断の辞)は周公,十翼は孔子の制作と信じていたが,むろんこれは《易》を権威づけるために言われた,文献学的根拠のない伝説にすぎない。孔子十翼制作説はすでに宋の欧陽修によって否定されたが(《周易童子問》),今日では,十翼はたがいに思想内容を異にしており,ひとりが同時に書いたものではなく,戦国時代から漢初に至る間に段階的に作られた,とされている。ともあれ《易経》は,十翼(特に繫辞伝)を得て思想的な内実を備えるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十翼」の意味・わかりやすい解説

十翼
じゅうよく

『易経(えききょう)』を解釈し、易の理論を述べるところの「彖伝(たんでん)」(上下)、「象(しょう)伝」(上下)、「文言(ぶんげん)伝」、「繋辞(けいじ)伝」(上下)、「説卦(せっか)伝」、「序卦伝」、「雑卦伝」の10篇(ぺん)をいい、紀元前後ごろには成立していた。

[藤原高男]

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普及版 字通 「十翼」の読み・字形・画数・意味

【十翼】じゆうよく

易伝。彖伝上下・象伝上下・辞伝上下・文言伝・説卦伝・序卦伝・雑卦伝の十

字通「十」の項目を見る

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占い用語集 「十翼」の解説

十翼

易経の本文の「経」を補足したものを「伝」といい、十編で構成されているので「十翼」と呼ばれる。その意味は鳥の翼が空でその身を支えるように、十編の「伝」も本文を支えるといった意味合いが込められている。十編の内容は「彖伝上・下」・「象伝上・下」・「繋辞伝上・下」・「説卦伝」・「文言伝」・「序卦伝」・「雑卦伝」からなる。孔子の作とされているが真相は不明である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十翼」の意味・わかりやすい解説

十翼
じゅうよく
Shi-yi

中国,儒教の経書『易経』を翼 (たす) ける 10編の注釈。「彖 (たん) 伝」上,下,「象伝」上,下,「繋辞伝」上,下,「文言伝」「説卦伝」「序卦伝」「雑卦伝」から成る。『易経』を単なる占いの方法の書から人事変化の理を探索する哲学書に転換させる理論的根拠を与えた文章で,中国哲学に深い影響があった。孔子の作と伝えられているが,実は秦~漢の間の成立。

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世界大百科事典(旧版)内の十翼の言及

【易経】より

…《周易》,《易》ともいう。本文(経(けい))は64種類の象徴的符号(卦(か))と,そのおのおのに付された短い占断の言葉から成っており,本文の解説(伝(でん))は彖(たん)伝をはじめ10編があるので,これを十翼(翼はたすける意)という。《易経》はこの経と伝との総称である。…

※「十翼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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