十念(読み)じゅうねん

精選版 日本国語大辞典 「十念」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ねん ジフ‥【十念】

〘名〙 仏語
① 一〇種の心念。すなわち、念仏・念法・念僧・念戒・念施・念天・念休息・念安般(ねんあんぱん)・念身非常・念死の総称
阿彌陀仏相好を一〇遍つづけて観想すること。またはその御名を一〇遍唱えること。十念称名。〔往生要集(984‐985)〕 〔往生論註‐上〕
慈心悲心・護法心など一〇種のおもいを数えたもの。「彌勒所問経」に説くとされている。〔往生要集(984‐985)〕
浄土宗・時宗で、僧が南無阿彌陀仏名号信者に授けて結縁(けちえん)させること。→十念を授く
謡曲遊行柳(1516頃)「かくて老人上人のおん十念を賜(たま)はり、おん前を立つと見えつるが、朽ち木の柳の古塚に、寄るかと見えて失せにけり」

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デジタル大辞泉 「十念」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ねん〔ジフ‐〕【十念】

仏語。
仏・法・僧・戒・施・天・休息ぐそく安般あんぱん・身非常・死の十について念ずること。十随念。
阿弥陀仏の相好を10度観想すること。また、「南無阿弥陀仏」の名号を10度唱えること。
浄土宗で、導師が信者に「南無阿弥陀仏」の名号を唱え授けて仏縁を得させること。「十念を授ける」

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改訂新版 世界大百科事典 「十念」の意味・わかりやすい解説

十念 (じゅうねん)

〈南無阿弥陀仏〉と阿弥陀仏の御名(みな)を10ぺん唱えること。《無量寿経》には十念によって阿弥陀仏の極楽浄土に往生できると説かれ,浄土教義の重要な根拠となっている。この十念を,唐の善導は《観無量寿経》の〈至心に声をして絶えざらしめ,十念を具足して南無阿弥陀仏と称す〉の文によって十声の称念と解し(《観経疏》),法然も〈声はこれ念,念は即ちこれ声〉とのべ(《選択(せんちやく)本願念仏集》),十声ととらえている。浄土宗や時宗では,十念授与といって,僧が信者に十念を授けて阿弥陀仏と縁を結ばせる。僧と信者が同時に10ぺん唱えるのを同称十念といい,またさきに僧が1ぺん唱え,つぎに信者が1ぺん唱え,相互に唱えあって10ぺんめで同時に唱え終わるのを切(きり)十念という。浄土宗では葬式のとき,導師が引導のあとで〈南無阿弥陀仏〉という六字の名号を10ぺん唱える。臨終に十声念仏して極楽に往生することを十念往生という。ほかに10種の心念,仏の相好を10ぺん観想することなどを指す場合もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十念」の意味・わかりやすい解説

十念
じゅうねん

仏教用語。 (1) 一般的には,十種のことに思いをこめ,心をこめて集中すること。十種とは,仏,法,僧,戒,施,天,休息 (ぐそく) ,安般 (ānāpānaの音写で呼吸の出入) ,身非常,死。 (2) 浄土教では,十念の念仏をいう。南無阿弥陀仏を抑揚をつけて十たび称えること。

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世界大百科事典(旧版)内の十念の言及

【大無量寿経】より

…法蔵菩薩の誓願は漢・呉訳では24であるが,増広された魏訳の48願の形で親しまれている。なかでも第18願では,〈十方世界の衆生が心を専一にして(至心)深く信じ(信楽)極楽に往生したいと願い(欲生),わずか10回でも心を起こす(十念)ならば,必ず極楽に往生できる〉と説いている。この〈十念〉が10回の念仏と解され,中国,日本における念仏による往生の思想の根拠として重視されるにいたった。…

※「十念」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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