十便十宜画冊(読み)じゅうべんじゅうぎがさつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「十便十宜画冊」の意味・わかりやすい解説

十便十宜画冊
じゅうべんじゅうぎがさつ

江戸中期の日本文人画の大成者、池大雅(いけのたいが)と与謝蕪村(よさぶそん)の合作による日本南画の代表的画帖(がじょう)。国宝。中国、明(みん)末清(しん)初の文人、李漁(りぎょ)(字(あざな)は笠翁(りゅうおう))の『伊園(いえん)十便十宜詩』によって描いている。詩は、伊山の麓(ふもと)に別荘伊園を構えた笠翁が、この山居における十の便利さと十の自然の宜(よ)さを詠んだもの。尾張鳴海(おわりなるみ)(愛知県)の酒造家、下郷学海(しもふさがくかい)の依頼で1771年(明和8)に制作された。十便図を大雅、十宜図を蕪村が担当し、自然のなかの人事を大雅はゆったりと、蕪村は自然の微妙な変化を巧みに小画面(17.9センチメートル四方)中に描出している。紙本淡彩。鎌倉・川端康成(やすなり)記念館蔵。

[星山晋也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十便十宜画冊」の意味・わかりやすい解説

十便十宜画冊
じゅうべんじゅうぎがさつ

明和8 (1771) 年作の南画画冊。『十便十宜帖』ともいう。『十便画冊』は池大雅,『十宜画冊』は与謝蕪村の筆で,各 10図から成る連作。紙本墨画淡彩。中国,清初の文人李漁の別荘,伊園における隠遁生活の快適さを詠んだ詩『伊園十便十宜詩』を主題とする。十便は人事,十宜は自然を扱う。自由な構成,やわらかい筆致と彩色のみずみずしさで題詩を飄逸な画趣のうちに表現した『十便画冊』は,大雅の傑作の一つ。『十宜画冊』も自然描写に清新な感覚をみせこれと競う。国宝。川端康成記念館蔵。

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