十二座神楽(読み)じゅうにざかぐら

改訂新版 世界大百科事典 「十二座神楽」の意味・わかりやすい解説

十二座神楽 (じゅうにざかぐら)

神楽曲は1曲を1座と数えるが,十二座神楽は12曲の神楽を奏することを基本とする場合の名称。ほとんど出雲流の神楽で,十二神楽,十二番神楽の名称もある。島根県の佐陀神能(さだしんのう)も12番行われるが,これはとくに十二座神楽の名称はない。江戸里神楽は山崎美成の《海録》(1837成立)に〈今用ゆる神楽の十二座などいへる舞は,土師(はじ)の舞とておほかた百五十年ばかりも前かたにいで来にける也〉とあり,十二座を基本とする。これは江戸里神楽源流とされる埼玉県久喜市の旧鷲宮(わしみや)町鷲宮(わしのみや)神社の〈土師一流催馬楽神楽〉(国指定重要無形民俗文化財)が十二座神楽を称したためで,同社ではすでに1708年(宝永5)に十二座神楽執行の記録がある。同社の十二座は《天照国照太祝詞神詠(あまてるくにてるふとのりとしんえい)之段》《天心一貫本末(てんしんいつかんもとすえ)神楽歌催馬楽之段》《浦安四方国堅(うらやすよものくにかため)之段》《降臨御先猿田彦鈿女(こうりんみさきさるたひこうずめ)之段》《磐戸照開諸神大喜(いわどしようかいしよしんだいき)之段》《八州起源浮橋事(やしまきげんうきはしわざのまい)之段》《太道神宝三種神器(だいどうしんぽうさんしゆのじんぎ)之段》《祓除清浄扚大麻(げつじよしようじようしやくおおぬさ)之段》《五穀最上国家経営之段》《翁三神舞楽之段》《鎮悪神発弓靱負(ちんあくしんはつきゆううつぼ)之段》《天神地祇感応納受(てんじんちぎかんのうのうじゆ)之段》である。ほかに東京都品川神社の十二座(太々神楽),福島県黒沼神社十二神楽,大分県佐伯市の十二番神楽(佐伯神楽)などが知られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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