匠明(読み)しょうめい

改訂新版 世界大百科事典 「匠明」の意味・わかりやすい解説

匠明 (しょうめい)

江戸幕府作事方大棟梁の平内へいうち)家に伝来した木割書。1608年(慶長13)秋の平内政信の署名,10年初春の政信の父吉政の署名があり,前者成立年代とみてよかろう。現存するのは写本で,東京大学(元禄ごろ),東京都立中央図書館(1898),小林家(1846・弘化3),大熊家,新家家に所蔵され,東京大学のものがもっとも内容がよい。門記集(門),社記集(鳥居,神社本殿,玉垣,拝殿等),塔記集(塔と九輪),堂記集(寺院本堂鐘楼方丈等),殿屋集(主殿,塀重門,能舞台等)の5巻から成り,それぞれの木割と,和歌山天満宮,出雲大社などの見聞録とを記す。吉政の奥書には,大工は五意(式尺の墨𨦈(すみかね),算合,手仕事,絵用,彫物)に達者でなければならぬと書かれ,木割をよく知り,積算,手仕事ができ,絵心があって彫刻も上手だというのが,大工の理想像であったことが知られる。
筆者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「匠明」の意味・わかりやすい解説

匠明
しょうめい

江戸初期に記された、5巻からなる大工の木割書。筆者は平内(へいのうち)政信(1583―1645)。それぞれの巻末に、1608年(慶長13)の政信による奥書、同10年の政信の父吉政の奥書がある。原本は伝わらず、現存写本のうち、東京大学所蔵のものがもっとも古くかつ整っている。平内政信は1632年(寛永9)に江戸幕府の作事方大棟梁(とうりょう)になっている。5巻の構成は、門記集、社記集、堂記集、塔記集、殿屋集である。

平井 聖]

『太田博太郎監、伊藤要太郎解説『匠明』(1971・鹿島出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「匠明」の意味・わかりやすい解説

匠明
しょうめい

桃山時代の建築書。著者は江戸幕府の大棟梁平内 (へいのうち) 吉政,政信父子。「殿屋集」「門記集」「堂記集」「塔記集」「社記集」の5巻から成り,慶長 13 (1608) 年成立。各種建築の木割 (きわり) についての代表的著作

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世界大百科事典(旧版)内の匠明の言及

【数寄屋造】より

…1564年(永禄7)編述の《分類草人木》に〈数寄座敷〉と出てくるのが早い例であるが,〈数寄屋〉の語もこのころには見られる。徳川幕府の大棟梁平内(へいのうち)家の伝書《匠明》(1608)に〈茶ノ湯座敷ヲ数寄屋ト名付ク事ハ 右同比 堺ノ宗易云始ル也〉とあり,聚楽第の建設された桃山期に千利休が命名したと伝えられているが,利休時代には,茶の湯座敷,小座敷あるいは単に座敷などと呼ばれることが普通であった。数寄屋という語は,桃山時代には茶の湯のための専用の室または建物のことをさしていたが,江戸時代に入るとしだいにその内容が拡大してゆく傾向を示し,茶室の建築手法や意匠をとり入れた座敷のことをも数寄屋と称するようになった。…

※「匠明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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