北太平洋漁業資源保存条約(読み)きたたいへいようぎょぎょうしげんほぞんじょうやく

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

北太平洋漁業資源保存条約
きたたいへいようぎょぎょうしげんほぞんじょうやく

北太平洋公海における漁業資源の長期的な保存および持続可能な利用の確保を目的とする条約。正式名称は「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約(Convention on the Conservation and Management of High Seas Fisheries Resources in the North Pacific Ocean)」であり、2012年(平成24)2月24日に東京で採択され、2015年7月19日に発効した。なお、発効前の第5回準備会合(2013年9月、台湾高雄(たかお))において、条約事務局を東京に設置することが全会一致で合意された。2021年(令和3)8月時点で日本カナダロシア、中国、韓国、台湾、アメリカ、バヌアツの8か国・地域が加盟している。

 その背景には、近年、IUU(違法・無報告・無規制)漁業が行われていること、また、底魚漁業が脆弱(ぜいじゃく)な公海生態系に悪影響を及ぼしていることに懸念が示されていたことがある。それにこたえて2006年に採択された国連総会決議(UNGA61/105)は、IUU漁業および底魚漁業規制のために各地域海洋に漁業管理機関を設立すること、また、2007年末までに暫定措置を採択し、実施することなどを求めた。それを受けて、日本、韓国、アメリカおよびロシアは2006年に地域漁業条約について検討を始め、2007年には、北西太平洋を対象とする暫定措置が採択された。その後、2009年以降は、対象海域が北東太平洋に拡大され、対象種も拡大されるとともに、参加国も、中国、カナダ、フェロー諸島、台湾に拡大され、最終的にこの条約として採択された。

 この条約は、北太平洋漁業委員会を設立するとともに、同委員会が定めた保存管理措置の実施を締約国に義務づけている。おおむね北緯20度以北の北太平洋の公海が対象であり、クサカリツボダイアカイカキンメダイサンマおよびサバ類が主要対象魚である。北太平洋、とくに天皇海山漁場は、日本の遠洋底魚漁業にとって重要であるため、この条約の交渉段階から日本はリーダーシップをとってきている。実際、この条約の交渉段階での、その対象海域での2008~2010年の日本の平均年間漁獲量は、クサカリツボダイ7672トン、キンメダイ1035トン、サンマ1152トン、アカイカ4489トンであった。

 日本国内では、2013年7月16日の受諾書の寄託を経て、2015年7月19日に発効した。

[磯崎博司 2021年10月20日]

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