北回帰線(読み)きたかいきせん(英語表記)Tropic of Cancer

精選版 日本国語大辞典 「北回帰線」の意味・読み・例文・類語

きた‐かいきせん ‥クヮイキセン【北回帰線】

[1] 〘名〙 北緯二三度二七分を走る線。北上してきた太陽夏至の日にこの線の真上を通り、以後再び南下する。⇔南回帰線。〔英和和英地学字彙(1914)〕
[2] (原題Tropic of Cancer) 長編小説アメリカ作家ヘンリー=ミラー処女作。一九三四年、パリ刊行。一九三〇年代の不況期における作者自身のパリ生活を描いた自伝的小説

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デジタル大辞泉 「北回帰線」の意味・読み・例文・類語

きた‐かいきせん〔‐クワイキセン〕【北回帰線】

地球上の北緯23度26分の緯線夏至げしの日に太陽がこの線の真上に来る。夏至線。→南回帰線
[補説]書名別項。→北回帰線
[類語]南回帰線回帰線

きたかいきせん【北回帰線】[書名]

《原題Tropic of Cancerヘンリー=ミラーの長編小説。1934年刊。パリを舞台に、作家である主人公の生活と意見を、超現実的手法などさまざまな表現形式を用いて描いたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「北回帰線」の意味・わかりやすい解説

北回帰線
きたかいきせん
Tropic of Cancer

アメリカの作家ヘンリー・ミラーの自伝的な反文学の小説。フランスで1934年、アメリカで1961年刊。金がすべてで非芸術的なアメリカ社会に愛想を尽かし、裸同然の無一文でパリに渡ったミラーと芸術家志望の友人たちとのボヘミアン生活を描いたもの。伝統的な意味での登場人物やプロットといったものはなく、できごとの写実的な描写形而上(けいじじょう)学的な観想、主人公=語り手独白とが並べて置かれていたりする。ノルウェーの作家ハムスン、フランスのセリーヌ、あるいはアメリカのホイットマン、ソローの影響のもとに、組織に縛られ、偏狭な観念と偏見と恐怖に支配されて「死の生」しか生きることのできない現代社会の人間一般を批判し、新しい生命の根源を歌い上げようとする。その人間の永遠的な普遍の自然に立脚する、けっして若くはない芸術家の「叫び」は、ときには宗教的、神秘的な厳しさをもち、ときにはラブレー的なユーモアをもって、一貫性と構築性のない小説に、内的な一貫性を与えている。

[筒井正明]

『大久保康雄訳『北回帰線』(新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「北回帰線」の意味・わかりやすい解説

北回帰線
きたかいきせん
Tropic of Cancer

北緯 23°27′の緯線。夏至線ともいう。夏至の日 (6月 21日頃) に太陽がこの線上の真上に達し,この緯線を北限としてやがてしだいに南へ去っていく。この線はサハラ砂漠を横断し,インドのコルカタ (カルカッタ) ,中国のコワンチョウ (広州) の北を通過,台湾の中央部,硫黄島の南を経てメキシコを通り,キューバの北を通過している。気候区分のうえで,この線の北を温帯,南を熱帯と呼ぶこともある。

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百科事典マイペディア 「北回帰線」の意味・わかりやすい解説

北回帰線【きたかいきせん】

回帰線

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世界大百科事典(旧版)内の北回帰線の言及

【回帰線】より

…地球の自転軸は,公転面に立てた垂線に対して23度27分傾いているので,太陽光線が地表に対して垂直に当たる部分は,地球の公転とともに1年の周期で変化する。春分のときは赤道部分であり,時間の経過とともに北側に移動し夏至のとき北の回帰線(北回帰線)上にくる。夏至を過ぎると南に戻り,秋分で赤道上に,さらに冬至には南の回帰線(南回帰線)上に至る。…

※「北回帰線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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