精選版 日本国語大辞典 「化」の意味・読み・例文・類語
か クヮ【化】
[1] 〘名〙
① 徳によって人民を善良に導くこと。感化。
※平家(13C前)五「堯舜(げうしゅん)無為の化をうたひ」
② 自然が万物を生育するはたらき。造化。施化。
※続日本紀‐養老七年(723)二月己酉「必代レ天而闢レ化、儀二北辰一者、亦順レ時以涵育」
③ 形、性質、状態などがうつり変わること。変遷。進歩。
※清国に対する宣戦の詔勅‐明治二七年(1894)八月一日「文明の化を平和の治に求め、事を外国に構ふるの極めて不可なるを信し」 〔淮南子‐人間訓〕
④ 他のものに姿をかえること。ばけること。
※談義本・豊年珍話(1760)四「木の根に打つけて、折檻しければ、今は化をあらはし面はとがりて狐のごとく」
[2] 〘接尾〙 名詞の下に付けて、そういう物、事、状態に変える、または、変わるという意を表わす。
ば・ける【化】
〘自カ下一〙 ば・く 〘自カ下二〙
※古今著聞集(1254)一七「狐おほくつねにばけけり」
② その道で年功を積む。
※浮世草子・好色二代男(1684)四「此里の化(バケ)たる人に、そそのかされて行に」
③ 人を欺こうとして、本来の素性を隠して、別人の恰好や、素振りをする。別人のさまをよそおう。
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉二「知ってゐますと仔細らしく容子有り気に答へた。化(バケ)課(おほ)せて見たくなって」
④ 全く違ったものに変る。他のものにすりかわる。また、急に変化する。
か‐・する クヮ‥【化】
[1] 〘自サ変〙 くゎ・す 〘自サ変〙
① 形や状態などが別のものに変わる。変化する。
※明月記‐治承四年(1180)二月一四日「倉町等片時化レ煙」
② 他から影響を受けて性向や行ないが変わる。感化または同化する。
[2] 〘他サ変〙 くゎ・す 〘他サ変〙
① 形や状態などを別のものに変える。変化させる。
② 他に影響を与えてその性向や行ないを変える。感化、または、同化させる。
※源平盛衰記(14C前)七「凡そ和歌は国を治め、人を化(クヮ)する源」
け【化】
〘名〙 仏語。
① 教え導いて良い方に転化させること。また、転化すること。→教化(きょうけ)。
※日本往生極楽記(983‐987頃)行基菩薩「菩薩周二遊都鄙一教二化衆生一。道俗慕レ化。追従者、動以レ千数」
※空華日用工夫略集‐観応二年(1351)「余皆随レ之助二其化一云」
※太平記(14C後)三七「観念の床の上には、妄想の化(ケ)のみ立ち副ひて」 〔六十華厳経‐二一〕
ばけ【化】
〘名〙 (動詞「ばける(化)」の連用形の名詞化)
① ばけること。異形のものに姿を変えること。
※太平記(14C後)三五「畠山狐の皮の腰当にばけの程こそ顕(あらは)れにけん」
② 「ばけもの(化物)」の略。
※歌舞伎・御摂勧進帳(1773)二番目「どうでもこりゃア、化(バケ)だな」
③ 人をたぶらかすこと。あざむくこと。だますこと。
※評判記・難波鉦(1680)一「またすぐばけをいふわいの」
④ 歌舞伎の所作事で、役者が数回姿を変えて演じる場合、その一つ一つの称。〔浪花聞書(1819頃)〕
け‐・す【化】
[1] 〘自サ変〙 形が変わる。ばける。変化する。化(か)する。
※観智院本三宝絵(984)中「魚も化して経とみゆ」
※今昔(1120頃か)六「化(くゑ)して僧と成り給ひぬ」
[2] 〘他サ変〙 教え導く。教化する。化(か)する。
※霊異記(810‐824)上「後には海辺に住み、往来の人を化す」
か‐・す クヮ‥【化】
〘自・他サ変〙 ⇒かする(化)
ば・く【化】
〘自カ下二〙 ⇒ばける(化)
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