(読み)か

精選版 日本国語大辞典 「化」の意味・読み・例文・類語

クヮ【化】

[1] 〘名〙
① 徳によって人民を善良に導くこと。感化。
※平家(13C前)五「堯舜(げうしゅん)無為の化をうたひ」
徒然草(1331頃)一七一「恵をほどこし、道を正しくせば、その化遠く流れん事を知らざるなり」 〔呂氏春秋‐士容〕
② 自然が万物を生育するはたらき。造化。施化。
※続日本紀‐養老七年(723)二月己酉「必代天而闢化、儀北辰者、亦順時以涵育」
③ 形、性質、状態などがうつり変わること。変遷。進歩
※清国に対する宣戦の詔勅‐明治二七年(1894)八月一日「文明の化を平和の治に求め、事を外国に構ふるの極めて不可なるを信し」 〔淮南子‐人間訓〕
④ 他のものに姿をかえること。ばけること。
※談義本・豊年珍話(1760)四「木の根に打つけて、折檻しければ、今は化をあらはし面はとがりて狐のごとく」
[2] 〘接尾〙 名詞の下に付けて、そういう物、事、状態に変える、または、変わるという意を表わす。
※自然主義論(1908)〈生田長江〉八「抽象的概念を具体化しようと云ふ技巧は」
[語誌]((二)について) 「文化、教化、変化、造化」などは漢籍に見える中国の古典語だが、幕末・明治初期に「醇化美化悪化、緑化、強化、硬化、液化、気化」など「化」付きの新語が多く造られ、明治後期から大正にかけて「化」の接尾語化が進み、「機械化、国有化、一般化、一元化」などの三字語を生み出した。

ば・ける【化】

〘自カ下一〙 ば・く 〘自カ下二〙
① 形をかえる。異形のものに姿をかえる。狐、狸、年老いた動物、また、妖怪などが種々に姿をかえる。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
古今著聞集(1254)一七「狐おほくつねにばけけり」
② その道で年功を積む。
浮世草子・好色二代男(1684)四「此里の化(バケ)たる人に、そそのかされて行に」
③ 人を欺こうとして、本来の素性を隠して、別人の恰好や、素振りをする。別人のさまをよそおう。
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉二「知ってゐますと仔細らしく容子有り気に答へた。化(バケ)(おほ)せて見たくなって」
④ 全く違ったものに変る。他のものにすりかわる。また、急に変化する。
※落語・狸(1895)〈四代目橘家円喬〉「二等道路とかいふ大きな道が出来たり何にかするが、夫れは土地の化(バ)けまするので」

か‐・する クヮ‥【化】

[1] 〘自サ変〙 くゎ・す 〘自サ変〙
① 形や状態などが別のものに変わる。変化する。
明月記‐治承四年(1180)二月一四日「倉町等片時化煙」
② 他から影響を受けて性向や行ないが変わる。感化または同化する。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「この奴隷を救うて、自主の人に化(〈注〉ナヲス)せしむること能はざるなり」
[2] 〘他サ変〙 くゎ・す 〘他サ変〙
① 形や状態などを別のものに変える。変化させる。
死霊‐三章(1946‐48)〈埴谷雄高〉「この世の身を月の光と化し」
② 他に影響を与えてその性向や行ないを変える。感化、または、同化させる。
源平盛衰記(14C前)七「凡そ和歌は国を治め、人を化(クヮ)する源」

け【化】

〘名〙 仏語。
① 教え導いて良い方に転化させること。また、転化すること。→教化(きょうけ)
日本往生極楽記(983‐987頃)行基菩薩「菩薩周遊都鄙化衆生。道俗慕化。追従者、動以千数」
※空華日用工夫略集‐観応二年(1351)「余皆随之助其化云」
② 仮りに別の姿を現わすこと。また、別の姿を現わしたもの。→化身(けしん)化生(けしょう)
※太平記(14C後)三七「観念の床の上には、妄想の化(ケ)のみ立ち副ひて」 〔六十華厳経‐二一〕

ばけ【化】

〘名〙 (動詞「ばける(化)」の連用形の名詞化)
① ばけること。異形のものに姿を変えること。
※太平記(14C後)三五「畠山狐の皮の腰当にばけの程こそ顕(あらは)れにけん」
② 「ばけもの(化物)」の略。
※歌舞伎・御摂勧進帳(1773)二番目「どうでもこりゃア、化(バケ)だな」
③ 人をたぶらかすこと。あざむくこと。だますこと。
※評判記・難波鉦(1680)一「またすぐばけをいふわいの」
④ 歌舞伎の所作事で、役者が数回姿を変えて演じる場合、その一つ一つの称。〔浪花聞書(1819頃)〕

け‐・す【化】

[1] 〘自サ変〙 形が変わる。ばける。変化する。化(か)する。
※観智院本三宝絵(984)中「魚も化して経とみゆ」
※今昔(1120頃か)六「化(くゑ)して僧と成り給ひぬ」
[2] 〘他サ変〙 教え導く。教化する。化(か)する。
※霊異記(810‐824)上「後には海辺に住み、往来の人を化す」

か‐・す クヮ‥【化】

〘自・他サ変〙 ⇒かする(化)

ば・く【化】

〘自カ下二〙 ⇒ばける(化)

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デジタル大辞泉 「化」の意味・読み・例文・類語

か【化】[漢字項目]

[音](クヮ)(漢) (呉) [訓]ばける ばかす
学習漢字]3年
〈カ〉
前と違った姿・状態になる。「化合化石悪化羽化開化気化激化硬化消化進化退化同化孵化ふか風化分化変化緑化老化
教育で人をよい方に変える。「感化教化徳化
自然が万物を育てる働き。「化育造化
「化学」の略。「化繊/理化」
〈ケ〉
1に同じ。「化粧化身
2に同じ。「教化能化
怪しい姿に変わる。ばける。「化生けしょう権化ごんげ変化へんげ
[名のり]のり
[難読]時化しけ

か〔クワ〕【化】

[名]影響を他に及ぼすこと。
「恵を施し、道を正しくせば、その―遠く流れん事を知らざるなり」〈徒然・一七一〉
[接尾]主として漢語に付いて、そのような物や事、状態に変える、または変わるという意を表す。「映画」「合理」「近代
[類語]

け【化/仮/花/家/華】[漢字項目]

〈化〉⇒
〈仮〉⇒
〈花〉⇒
〈家〉⇒
〈華〉⇒

け【化】

仏語。教え導くこと。教化きょうけ
仏・菩薩ぼさつが人々を教化するために、姿を変えて現れること。
高僧が死ぬこと。遷化せんげ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化」の意味・わかりやすい解説


仏教用語。 (1) 衆生を教え導いて正しい教えに転向させること。教化。他を教える者すなわち仏,菩薩を能化といい,教えられる衆生を所化という。転じて,寺院に住込んで修行する弟子僧を所化といい,また一宗の学頭を能化という宗派 (新義真言宗) もある。 (2) 仏,菩薩が衆生を教化するため神通力で種々の姿を化作すること,あるいはみずから化して他の姿をとること (化身,権化など) 。 (3) 遷化すなわち有徳の僧が死ぬこと。

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