化性(読み)カセイ

デジタル大辞泉 「化性」の意味・読み・例文・類語

か‐せい〔クワ‐〕【化性】

昆虫が1年間世代何回か繰り返す性質。その世代数によって、一化性二化性多化性のようにいう。

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精選版 日本国語大辞典 「化性」の意味・読み・例文・類語

か‐せい クヮ‥【化性】

〘名〙 昆虫が一年間にきまった数の世代を繰り返す性質。その回数によって一化性、二化性といい、三化性以上を多化性ともいう。カイコなどにもいわれ、回数は定まっているが温度や光の影響で変わることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「化性」の意味・わかりやすい解説

化性
かせい

昆虫が1年間に何回世代を繰り返すかは種によってそれぞれ定まっている。その性質を化性という。化性は1年間の世代回数によって、それぞれ一、二、三、四化性があり、三化性以上のものは多化性ともいう。ある種の昆虫がどんな化性を示すかは、基本的にはその種の遺伝的形質によって決まっている。一化性、二化性昆虫のように年間世代数の少ないものは、環境要因(とくに日長、温度など)に反応し、卵、幼虫、蛹(さなぎ)、成虫のいずれかの発育段階で長期間の休眠現象を示す。昆虫はこの顕著な環境適応現象により、1世代の長さや発生時期を調節している。とくに一化性昆虫にみられる休眠支配の遺伝形質の発現は強く、かならず休眠する次世代を産するため、ほかの化性に変わることはない。二化性昆虫では休眠の遺伝的支配は緩く、潜在的には多化性にもなりうるが、その種の分布域の環境要因に発育が制約されるため、年2回発生する二化性となっている。年間を通じて高温で日長変化の少ない亜熱帯から熱帯にかけては、休眠性を完全に欠いた多化性昆虫が多く分布している。

 飼育昆虫のカイコでもいろいろの化性の品種がある。一化性カイコガはかならず休眠卵(クロダネとよばれる)を産むので年1世代となる。多化性カイコガはかならず非休眠卵(ナマダネとよばれる)を産む。二化性のガでは、春から初夏にかけて発育した第1世代は非休眠卵を産み、夏から秋にかけて発育した第2世代が休眠卵を産むので、年2世代となる。一化性、二化性のカイコの休眠卵に塩酸処理をして休眠を覚醒(かくせい)する人工孵化(ふか)法は、休眠卵の実用的利用法として養蚕分野では広く行われている。

[安居院宣昭]

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改訂新版 世界大百科事典 「化性」の意味・わかりやすい解説

化性 (かせい)
voltinism

自然環境のもとで,昆虫が1年間に何世代繰り返すかという性質。すなわち,年に1世代だけのものを1化性,2世代繰り返すものを2化性と呼ぶ。それより多いものは順次3,4,……化性,あるいは総称して多化性と呼ぶ。昆虫は自然環境の変化から生育に不適な季節の到来を予知し,発生の特定時期に成長や活動を止めて休眠する。化性の違いは環境に対する感受性の差によるもので,遺伝的支配を受けるため,同種の昆虫の中にも化性の異なるものが混在することが多い。化性に影響する環境要因には,温度,光線(光周期),湿度などがあり,これらを人為的に変えると化性が一時的に変化することがある。たとえば,2化性のカイコの卵を15℃で保護すると次代の卵は孵化(ふか)して世代を繰り返すが,25℃で保護すると次代の卵は休眠してしまい一時的に1化性となる。20℃程度の中間温度では光線条件が影響し,暗は低温,明は高温と同じ影響を与える。一般に,昆虫の化性は脳によって規制され,アラタ体,前胸腺や食道下神経節などにおけるホルモン分泌の有無によって支配される。
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百科事典マイペディア 「化性」の意味・わかりやすい解説

化性【かせい】

昆虫が自然状態で1年に繰り返す世代数。年に一世代のものを一化性,年二世代のものを二化性,それ以上を多化性という。多くの遺伝的一化性のものを除き,化性は幼虫発生時の環境条件(日長,温度など)の影響を受け,脳,アラタ体,前胸腺,食道下神経節からのホルモンによって直接支配される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化性」の意味・わかりやすい解説

化性
かせい
voltinism

昆虫が1年間に何世代を繰返すかをいう。化性は属,種,亜種などによって決っているが,カイコガでは品種により化性が異なることが知られている。年間の反復世代数によって1,2,3,4化性種などと呼び,3化性種以上を多化性種ともいう。

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