包接化合物(読み)ホウセツカゴウブツ(英語表記)inclusion compound

デジタル大辞泉 「包接化合物」の意味・読み・例文・類語

ほうせつ‐かごうぶつ〔ハウセツクワガフブツ〕【包接化合物】

クラスレート化合物

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「包接化合物」の意味・読み・例文・類語

ほうせつ‐かごうぶつ ハウセツクヮガフブツ【包接化合物】

〘名〙 原子分子立体構造格子のすきまに別の原子や分子がはいりこみ、一定の組成比で特定構造を形づくっている化合物

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「包接化合物」の意味・わかりやすい解説

包接化合物
ほうせつかごうぶつ
inclusion compound

分子化合物一種で、一方の分子種が籠(かご)状、トンネル状あるいは層状の分子規模の空間をつくり、そこへ形状と寸法が適合する他方の分子種が収納(包接)されて生成する化合物。クラスレイト化合物clathrate compoundともいう。空間をつくる化学種ホスト、包接される化学種をゲストという。ホストとゲストとの間に強い化学結合がなくても、形状と寸法さえ適合すれば生成することが多い。ヨウ素デンプン反応で生成する青色物質はその一例で、螺旋(らせん)状に巻かれたデンプンの構造がつくるトンネル状空間にヨウ素原子が一列に包接されている。酵素が基質を取り込むときの選択性も、部分的な包接構造の生成が作用している。メタンハイドレートと俗称される物質は、氷H2Oをホスト、メタンCH4をゲストとするメタン包接水和物(限界組成式8CH4・46H2O)である。

[岩本振武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「包接化合物」の意味・わかりやすい解説

包接化合物
ほうせつかごうぶつ
inclusion compound

クラスレート化合物 (ラテン語で格子で包み込まれるの意) ともいう。ある分子がかご形構造をつくり,その空孔の中に他の原子や分子を包んだ構造をもつ化合物。したがって両者の間には化学結合がなく,厳密な意味では化合物ではない。化学的性質は外側のかご形構造 (ホスト格子) を形成している分子のほうの性質を示す。融解または溶解すると両者は容易に分離する。かご形構造はほとんどの場合,水素結合によるものが多い。たとえばヒドロキノンが水素結合により網目構造をつくり,その中に他物質Xを包み,[C6H4(OH)2]3X の形の包接化合物をつくる。Xはアルゴン,クリプトン,キセノン,メチルアルコール,二酸化硫黄,二酸化炭素,塩化水素,臭化水素,シアン化水素,硫化水素などで,Xの条件としては網目に相当する程度の大きさをもつことが必要である。Xをゲスト分子ともいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「包接化合物」の解説

包接化合物
ホウセツカゴウブツ
clathrate compound, inclusion compound

挿入化合物の一種で,ホスト分子またはホスト格子のつくる空間に,第二の分子状の化学種(ゲスト)が取り込まれたもの.たとえば,デンプン分子のつくるらせん構造にヨウ素分子が閉じこめられたヨウ素デンプン,ヒドロキノンのつくるかご状構造にメタノール分子が包接されている付加化合物,希ガス原子が水分子のかご状構造に入っている氷クラスレートなど.IUPAC(1995年)では,空間がかご状の場合,区別してクラスレート化合物とよぶことをすすめているが,日本語では区別しないこともある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「包接化合物」の意味・わかりやすい解説

包接化合物 (ほうせつかごうぶつ)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「包接化合物」の意味・わかりやすい解説

包接化合物【ほうせつかごうぶつ】

クラスレート化合物

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の包接化合物の言及

【クラスレート化合物】より

…一つの化合物が結晶をつくる際に,その立体的な三次元網目構造によってできる一定の空洞に,他の物質の分子または原子を閉じこめてできる一定の組成比の化合物をいう。包接化合物,また英語ではinclusion compound,enclosure compoundということもある。クラスレートの名はギリシア語のkleithron(かんぬき)に由来する。…

※「包接化合物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android