勤・努・務・勉(読み)つとめる

精選版 日本国語大辞典 「勤・努・務・勉」の意味・読み・例文・類語

つと・める【勤・努・務・勉】

[1] 〘自マ下一〙 つと・む 〘自マ下二〙
① 精を出して物事に当たる。努力して行なう。励む。
書紀(720)継体二一年八月(前田本訓)「重(また)詔して曰はく、〈略〉社稷存亡(ほろひほろひさらむこと)、是に在り。勗哉(ツトメヨ)、恭(つつし)みて天(あまつ)の罰を行へ」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉七「多き方は、怠れど、少き方は、勉むる故に、却て勝利を得べし」
② 仏道に励む。仏事をおさめる。勤行(ごんぎょう)精進する。
※仏足石歌(753頃)「人の身は 得がたくあれば 法(のり)の為(た)の よすがとなれり 都止米(ツトメ)もろもろ 進めもろもろ」
③ 自愛する。自重する。軽はずみなことをしない。気をつける。慎む。
※書紀(720)舒明即位前(北野本訓)「百歳の後に嗣の位汝に当れるに非ずや。故に慎みて自愛(ツトメヨ)
④ 苦しいのをがまんして行なう。気が進まないのに無理をして行なう。
※小学読本(1873)〈田中義廉〉二「実に、手紙を、書くことは、務むべき業なり」
⑤ 職につく。企業の職員として働く。
※機械(1930)〈横光利一〉「私もまだどこへ勤めるあてとてもない」
遊女として奉公する。遊女として客の相手をする。遊女勤めをする。
浮世草子・好色一代男(1682)七「高橋泪ながら勤(ツトム)る身の悲しさは、先まいりて断(ことわり)を申て」
⑦ 他人のために尽くす。奉仕を心がける。「自分ではつとめているつもりだが、気に入られない」
(イ) 特に、遊女のために、なじみの遊客が物日などに援助してやる。
咄本・鹿の巻筆(1686)二「身が方へもちと参られよ、さりながら、方々へつとむるゆへひまなし」
(ロ) 値段をひく。安くする。勉強する。
刑務所などで労役などを行なう。
※いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二「恩赦があるから、まあ、十年とツモって、十年つとめて出てくれば、いい顔だ」
[2] 〘他マ下一〙 つと・む 〘他マ下二〙
① できるように尽力する。本分として努力する。勉強する。
学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉初編「専ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり」 〔論語‐学而〕
② 苦しいのをがまんして行なう。気が進まないのに無理をして行なう。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一「出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の傍に居る事をつとめた」
③ 命じられた職務をとり行なう。役目として事に従事する。仕事につく。つかえる。勤務する。奉公する。
源氏(1001‐14頃)帚木「御むすこの君だち、ただこの御とのゐ所の宮づかへをつとめ給ふ」
演劇役者として役割を演じる。芸能を演じる。
※風姿花伝(1400‐02頃)四「六十六番までは一日につとめ難しとて、その中を選びて〈略〉これ三を定む」

つとめ【勤・努・務・勉】

〘名〙 (動詞「つとめる(勤)」の連用形の名詞化)
① 精を出して励むこと。また、当然やらなければならない物事。義務。責務。
※冥報記長治二年点(1105)上「師等努力(ツトメセヨ)。今瞑に必ず城に入る須し」
② 仏語。仏道を修行すること。勤行(ごんぎょう)。精進(しょうじん)
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「遍く請益の勤(ツトメ)を効はし冠世の英賢は屡求法之志を申べたり」
③ 仕えて仕事をすること。役目として仕事をすること。奉公すること。任務。勤務。職分。
※旧約全書(1888)創世記「是はアブラハムわが言に順ひわが職守(ツトメ)とわが誡命とわが憲法とわが律法を守りしに因てなり」
④ 遊女が、客の相手をすること。また、その稼業や境遇。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第一一「勤の身にて万事は哀れ 塞翁が馬をつないで大臣さま」
⑤ 遊里での遊興費の勘定。遊女の揚げ代の支払い。枕金。転じて、一般に飲食店などでの代金・勘定書。
※浮世草子・好色万金丹(1694)二「その代りは此旦那、千増倍の御つとめ、我等たちまち請合奉る」

つと・む【勤・努・務・勉】

〘自他マ下二〙 ⇒つとめる(勤)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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