勝相撲浮名花触(読み)かちずもううきなのはなぶれ

精選版 日本国語大辞典 「勝相撲浮名花触」の意味・読み・例文・類語

かちずもううきなのはなぶれ かちずまふ‥【勝相撲浮名花触】

歌舞伎世話物。四幕。勝俵蔵(のちの鶴屋南北)作。文化七年(一八一〇江戸市村座初演。お俊伝兵衛の書き替えに力士白藤源太を配した旧作に、本所下駄の歯入れ殺しの巷説をとり入れたもの。白藤源太。白藤お俊

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改訂新版 世界大百科事典 「勝相撲浮名花触」の意味・わかりやすい解説

勝相撲浮名花触 (かちずもううきなのはなぶれ)

歌舞伎狂言。世話物。4幕。4世鶴屋南北作。1810年(文化7)3月江戸市村座初演。白藤源太を3世坂東三津五郎,お俊を5世岩井半四郎,勝次郎を7世市川団十郎,権助を5世松本幸四郎という配役。〈お俊伝兵衛〉に〈白藤源太〉を加えたものの書替で,新たに本所の下駄の歯入れ殺し事件を採り入れた。力士白藤源太と芸者お俊は,二人の間にできた子兼松を,下駄の歯入れ権助へ里子に出した。権助は兼松を荷の中に入れて商売に出ている。源太は恩人の子の放蕩者津川勝次郎のために奔走,たずねる短刀を権助が持つと知って本所割下水で取り返そうとし,過って権助を殺したが,短刀は偽物であった。兼松を抱いてお俊の家に帰った源太のために,本物の短刀を手に入れるべくお俊は,津川家出入りの坂間伝兵衛(幸四郎)と計り,源太に愛想づかしをし,お俊に惚れる悪侍潮田伴之進から短刀をまき上げる。短刀は改心した勝次郎の手へ無事に渡る。お俊の真意を知らぬ源太は向島でお俊を殺そうとするが,伝兵衛の手紙ですべてを知る。人殺しの罪清算のため死のうとする二人を伝兵衛がとどめて一件は落着。首尾一貫した簡潔な筋立に特色があるほか脇役ながら実悪(じつあく)の幸四郎が扮した権助の悪者ぶりがよく描かれ,〈本所割下水の殺しの場〉が評判となり,その後の上演の中心となっている。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「勝相撲浮名花触」の解説

勝相撲浮名花触
かちずもう うきなのはなぶれ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
勝俵蔵(1代) ほか
初演
文化7.3(江戸・市村座)

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世界大百科事典(旧版)内の勝相撲浮名花触の言及

【鶴屋南北】より

…むしろ一貫して迫真的な市井風俗や下層民衆生活を描写する〈生世話(きぜわ)〉の追求,また当時の観客の嗜好でもあった残虐な殺し場やきわどい濡れ場の描出に力点をおき,劇的展開と,仕掛物や亡霊などによる怪奇趣味,あるいは奇抜な趣向によって異質なもの同士を結合させ,世界の複合性を構築してゆくドラマツルギーなどが大きな特徴であったといえよう。 前期の代表作としては,公卿が辻君となって春をひさぐ趣向が評判となった《四天王楓江戸粧(してんのうもみじのえどぐま)》(1804年11月河原崎座),小幡(こばた)小平次の怪談に皿屋敷と天竺徳兵衛の世界を綯交(ないま)ぜにし,松助が小平次,鉄山,おとわなどの役々を演じた《彩入御伽艸(いろえいりおとぎぞうし)》(1808年閏6月市村座),幸四郎が演じた〈馬盥(ばだらい)の光秀〉の《時桔梗出世請状(ときもききようしゆつせのうけじよう)》(1808年7月市村座),すでに好評を博した天竺徳兵衛を土台に阿国御前(松助)の怪談,累・与右衛門の早替り(栄三郎を3世菊五郎)を見せた《阿国御前化粧鏡(けしようのすがたみ)》(1809年6月森田座),本町糸屋の娘お房とお時(二役,半四郎)と本庄綱五郎(三津五郎),半時九郎兵衛(幸四郎),お祭左七(松助)らの活躍する《心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)》(1810年1月市村座),白藤源太の書替えの世話狂言で釣鐘権助(幸四郎)が源太(三津五郎)に殺される《勝相撲浮名花触(かちずもううきなのはなぶれ)》(1810年3月市村座),善玉悪玉双方で18人ないし21人の登場人物が惨殺される返り討狂言で,幸四郎が左枝大学之助と立場の太平次という時代と世話の敵役を演じわけた《絵本合法衢(がつぽうがつじ)》(1810年5月市村座),風鈴蕎麦屋が娘を殺す双蝶々の書替狂言《当龝八幡祭(できあきやわたまつり)》(1810年8月市村座),また夏祭の書替えで,のちの四谷怪談の原型ともなった《謎帯一寸徳兵衛(なぞのおびちよつととくべえ)》(1811年7月市村座)などがある。この年7月に出された法令(狂言中府内地名の使用禁止,衣裳小道具法度,糊紅の使用禁止など)に抵触するところあってか,《謎帯》は興行を中絶した。…

※「勝相撲浮名花触」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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