労働強度(読み)ろうどうきょうど

改訂新版 世界大百科事典 「労働強度」の意味・わかりやすい解説

労働強度 (ろうどうきょうど)

一定時間内における労働給付量の大きさをいい,労働時間が労働給付量の外延的大きさを表すのに対し,その内包的大きさを表すものである。時間賃率の場合,労働強度の強化は労務費削減につながり,また労働時間の延長機械設備の稼働率を高め,その償却を早めるため,資本主義的企業においては労働時間の延長と労働強度の強化への誘因がつねに働くといってよい。労働者階級の抵抗などもあって労働時間は歴史的に徐々に短縮されつつあるため,企業は出退勤管理の厳正化などによる実際作業時間の増大をはかったり,経営工学(IE)的手法の適用による合理的な労働力の活用や,コンベヤシステムの導入などの生産・工程管理の合理化による労働強度の標準化・強化をはかっている。だが労働強度の強化が労働時間の短縮を伴わずに進められると,労働者の肉体的・精神的疲労蓄積され慢性化することになり,結局,労働生産性が低下し労働災害率も高まるおそれがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働強度」の意味・わかりやすい解説

労働強度
ろうどうきょうど
intensity of labour

単位労働時間内の労働支出量のことで、労働の密度または集約度ともいう。労働時間の長さが労働の外延的な大きさを表すのに対し、労働強度は労働の内包的な大きさを表す。各国および各生産部門には、その発展段階によって一定の標準的な労働強度が存在する。それ以上に労働強度が増大させられると労働強化になる。労働強度は、機械の運転速度の増大、機械の操作もしくは監視範囲の拡大によって高められる。この過程は、労働の支出量や緊張度を高めることから、出来高払賃金や管理組織による労働の刺激もしくは統制を伴うことがしばしばである。労働強度の推移は、生産強度指数(生産指数÷雇用指数)をはじめ労働災害率、疲労の蓄積などから間接的に計測される。

[三富紀敬]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「労働強度」の意味・わかりやすい解説

労働強度
ろうどうきょうど
work intensity

労働の激しさの程度。筋肉作業の激しさを表わす尺度として,エネルギー代謝率 relative metabolic rate (RMR)が用いられる。労働時の消費エネルギー量から安静時の消費エネルギーを減じ,この値が基礎代謝量の何倍にあたるかを示す数値である。このようにすると,年齢,性,体格による影響がなくなり,ある作業をだれがやってもほぼ同様な値となる。基礎代謝量とは労働をしないで生命を維持するだけのエネルギー代謝量をいい,年齢別,性別に定められている。 RMRが0~2を軽労働,2~4を中労働,4以上を重労働としている。ただし,この方法では精神労働の激しさを表わすことはできない。

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