加齢とホルモン/ホルモン補償療法

内科学 第10版 の解説

加齢とホルモン/ホルモン補償療法(内分泌系の疾患)

 エストロゲン閉経を境に急激な低下を認め,その低下は更年期メノポーズ)とよばれ女性の更年期障害や以後老年期の身体症状の発現に重要な役割を果たすことはよく知られている.一方加齢に伴う軽微なホルモンの漸減低下も種々の加齢現象を規定する重要な要因である.GH(growth hormone)-IGF(insulin-like growth factor)-1系,DHEA-S(dehydroepiandro­sterone-sulfate),テストステロン(testosterone,T)は加齢による漸減変動を認め,それぞれソマトポーズ,アドレノポーズ,アンドロポーズとよばれている(図12-17-1)(柳瀬ら, 2010).これらのホルモン変動は老化指標となるだけでなく,近年ではTやDHEAは長生き指標としても有用である可能性が示唆されている.近年,多くの研究成績から加齢に伴うこれらのホルモンの減少は,老化に伴う内臓脂肪増加,糖尿病発症リスクの増大,心血管病の増加,骨密度の低下などに関与する可能性が示唆されている.その制御手段としてホルモン補充療法の試みがなされているが,その臨床的効果は更年期症状に対するエストロゲン補充効果を除いては,いまだ明確には確立されていない.[柳瀬敏彦]
■文献
岩本晃明,他:日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定.日泌尿会誌,95: 751-760,2004.
Roth GS, et al: Biomarkers of caloric restriction may predict longevity in humans. Science, 297: 811, 2002.
柳瀬敏彦,村瀨邦崇:アンチエイジングとしてのホルモン補充療法− GH, DHEA, テストステロン−. 臨床と研究,87: 515-520, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android