加美(読み)かみ

改訂新版 世界大百科事典 「加美」の意味・わかりやすい解説

加美[町] (かみ)

宮城県北西部,加美郡の町。2003年4月小野田(おのだ),中新田(なかにいだ),宮崎(みやざき)の3町が合体して成立した。人口2万5527(2010)。

加美町南部の旧町。加美郡所属。人口8092(2000)。鳴瀬川上流にあり,船形山北麓など奥羽山脈山間を占める。総面積の大部分山林で,北東部の鳴瀬川の扇状地水田が広がる。かつては馬産地として知られたが,現在は米作を主とする農林業が中心である。北に接する旧宮崎町にかけての水田は江戸初期に新田が開発され,1969年から行われた土地改良事業で圃場整備が進んだ。町域のほぼ中央にある薬萊山山麓では,1967年からの国営開拓事業で牧草地や畑が造成され,酪農が行われている。79年には鳴瀬川上流に漆沢ダムがつくられた。人口減少が続いているが,91年薬萊山麓に温泉が湧出し,観光開発が進められている。北西端にある魚取(ゆとり)沼はテツギョの生息地(天)である。

加美町北東端の旧町。加美郡所属。人口1万3929(2000)。鳴瀬川が仙北平野に出る谷口に位置し,町域は北西から南東に細長い形状を示す。北部丘陵,中・南部は低地で水田が広がる。中心集落の中新田は鳴瀬川の谷口集落で,奥州街道の脇街道である羽後街道と中羽前街道が交差する交通の要地であった。中世には仙北地域を治めた大崎氏の居城があり,近世には仙台藩の代官所が置かれた。明治以後も加美郡の商業中心として発達した。東部の鳴瀬地区では米作が,丘陵部の広原地区では酪農,果樹栽培が行われている。伝統産業として草刈鎌の生産があるほか,1960年代前半から電子部品や衣料などの工場が進出している。城生(じよう)には古代の城生柵跡(史)があり,その東の菜切谷(なぎりや)からは奈良時代の瓦が出土し,菜切谷廃寺跡と呼ばれる。

加美町北部の旧町。加美郡所属。人口6309(2000)。鳴瀬川の支流田川の上流域にあり,西は奥羽山脈の山地である。室町時代以降は大崎氏の領地で,近世には伊達氏の所領となり,野谷地の新田開発が進められ,金,銅などの鉱山開発や良質の陶石を素材とする切込焼などが奨励された。明治期には役牛馬,特に軍馬の生産地として知られた。第2次大戦後は肉牛飼育や酪農が盛んになり,家畜市場で子牛の取引が行われる。米作を中心とし,ウド,ハトムギ栽培などを営む。西端の魚取沼はテツギョの生息地(天)。
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加美(兵庫) (かみ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「加美」の意味・わかりやすい解説

加美
かみ

兵庫県中央部、多可郡(たかぐん)にあった旧町名(加美町(ちょう))。現在は多可町の北部を占める一地区。1955年(昭和30)松井庄(まついしょう)、杉原谷(すぎはらだに)の2村が合併して加美村となり、1960年町制施行。2005年(平成17)、中(なか)、八千代(やちよ)2町と合併して多可町となる。『和名抄(わみょうしょう)』の賀美郷の地。播磨(はりま)国最高峰の千ヶ峰(1005メートル)などの山々に囲まれた山村で、旧町域の中央を杉原川が貫流し、川に平行して国道427号が走る。杉原地区は平安時代から杉原紙の産地として知られ、貴族の料紙、鎌倉武士の贈答用に珍重された。洋紙普及などで大正期に廃絶したが、1972年に町立杉原紙研究所(現在は多可町立)が設立され、生産を再開した。一帯は良質のスギ、ヒノキの産地として知られ、また、千ヶ峰は眺望に優れ、笠形(かさがた)山とともに県立自然公園をなす。播州織(ばんしゅうおり)の生産も盛んである。

[二木敏篤]

『『加美町史』(1984・加美町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加美」の意味・わかりやすい解説

加美
かみ

兵庫県中部,多可町北部の旧町域。加古川の支流杉原川上流域にある。 1955年松井庄村と杉原谷村が合体して加美村となり,1960年町制。 2005年町,八千代町と合体して多可町となった。平安時代から杉原紙で知られた製紙の地で,地名も紙にちなむ。町立杉原紙研究所がある。大部分が山地で,杉材を産し,千ヶ峰の山腹には千本杉と呼ばれる古木があり,一帯は笠形山千ヶ峰県立自然公園に属する。北部の山岳地帯は朝来群山県立自然公園に属する。

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