副甲状腺機能低下症(上皮小体機能低下症)(読み)ふくこうじょうせんきのうていかしょうじょうひしょうたいきのうていかしょう(英語表記)Hypoparathyroidism

家庭医学館 の解説

ふくこうじょうせんきのうていかしょうじょうひしょうたいきのうていかしょう【副甲状腺機能低下症(上皮小体機能低下症) Hypoparathyroidism】

[どんな病気か]
 副甲状腺ホルモンの作用が低下している状態で、血中のカルシウム濃度が低下し、リンの濃度が上昇しています。
 原因としては、副甲状腺ホルモン分泌(ぶんぴつ)そのものが少ない場合と、副甲状腺ホルモンの分泌は正常でも、ホルモンが作用する骨や腎臓(じんぞう)などの部位受容体(じゅようたい))に異常があるため、ホルモンの作用が発揮できない場合とがあります。
 副甲状腺ホルモンの分泌低下は、甲状腺の手術などで副甲状腺組織がなくなってしまった術後(じゅつご)副甲状腺機能低下症のこともありますが、はっきりした原因もないのに分泌が低下する特発性(とくはつせい)副甲状腺機能低下症のこともあります。
 また、受容体の異常でおこるものを偽性(ぎせい)副甲状腺機能低下症と呼びますが、遺伝的素因によると考えられています。
[症状]
 症状の多くは、血液中のカルシウム濃度低下のための神経、筋肉の興奮によっておこります。典型的な症状はテタニー発作(ほっさ)です。痛みをともなった強直性(きょうちょくせい)の筋肉のけいれんで、両手指がこわばり、親指が内側に寄った、いわゆる助産婦手位になるほか、両足のこわばり、顔のひきつれ、手指やくちびるの周囲のしびれが現われます。全身のけいれんをおこし、てんかんとまちがわれることもあります。また情緒不安定、不機嫌、不安感、いらいら感などの精神症状もともないます。
 そのほか、白内障(はくないしょう)を合併して視力が低下したり、真菌(しんきん)(かび)が感染する皮膚モニリア症をおこしたり、爪(つめ)、毛髪、歯に異常がおこることもあります。
 偽性副甲状腺機能低下症の場合には、低身長(ていしんちょう)と肥満の傾向があり、顔が丸く、手足の指が短く、皮下や軟部組織に石灰化(せっかいか)や骨化(こつか)がおこるという特徴のある症状を示すこともあります。
[検査と診断]
 上腕を圧迫して血流を低下させたときに、3分以内に手指のしびれやこわばり(トルーソー現象)が出現してくれば、副甲状腺機能低下症が疑われます。血液検査でカルシウム濃度の低下とリン濃度の上昇がみられれば、診断が確定します。
 血中副甲状腺ホルモン値は、特発性副甲状腺機能低下症の場合は低下、偽性副甲状腺機能低下症の場合は上昇します。そのほか、脳波に異常が出たり、頭部X線撮影、CTスキャン、MRIを行なうと大脳基底核(だいのうきていかく)というところに石灰像が写ることもあります。
[治療]
 活性型ビタミンD剤を内服します。カルシウム剤も一緒に内服することもあります。これを毎日続けることで血中カルシウム濃度が正常になり、通常の日常生活が送れます。
 薬は、出なくなったホルモンの代わりとなるものですから、一生服用する必要があります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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