前駆(読み)ぜんく

精選版 日本国語大辞典 「前駆」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐く【前駆】

〘名〙 (古くは「せんく」「せんぐ」「ぜんぐ」とも) 行列などの前方騎馬で進み、先導すること。また、その人。さきのり。さきがけ。先駆ぜんくう。
※九暦‐九暦抄・天暦三年(949)正月一一日「午終請客使侍従延光朝臣来、即参向、延光時時前駈、拝礼如常」
随筆・貞丈雑記(1784頃)四「前駈(セング)と云は主君外之御出の時御こしより先へ参る先供の事也」 〔詩経‐衛風・伯兮〕
[語誌](1)読みは文献や時代によってセンク・セング・ゼンク・ゼング・センクウなどいろいろある。「前」字は漢音セン・呉音ゼン。「色葉字類抄」には「前」「駆」の両字に平声の単点があり、共に清音であったことが知られる。「元亀本運歩色葉集」には「先駆」と表記されているところから「セン」と清音で読まれたと考えられるが、「駆」には「グ」と濁音符号があり、連濁していたと見られる。
(2)「前駆」を行なう人には状況に応じて束帯・衣冠・布衣のそれぞれの場合があったようで、人数自体も一定ではない。路次の行列としては、下臈・上臈・主となる。「前駆」は古く「御前(ごぜん)」といい、後には馬に乗って前を行くものを「前駆」、主に近いものを「御前」と言い分けたとされるが、はっきりしない。

ぜん‐くう【前駆】

〘名〙 (「せんくう」「せんぐう」とも) 「ぜんく(前駆)」の変化した語。
※能因本枕(10C終)一二六「小さき馬に乗りて、せんくうしたる」

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デジタル大辞泉 「前駆」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐く【前駆】

[名](スル)
《古くは「せんぐ」「ぜんぐ」とも》行列などの前方を騎馬で進み、先導すること。また、その人。さきのり。さきばらい。先駆。
「あのかたのお召車らしいのが…―させながらお近づきになって」〈堀辰雄・かげろふの日記
物事の起こる前ぶれ。
[類語]先んずる先んじる先立つ先駆ける先走る先に立つ先頭を切る先行先導主導誘導率先音頭取り先駆先回り抜け駆けリード

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普及版 字通 「前駆」の読み・字形・画数・意味

【前駆】ぜんく

行列の先がけ。〔詩、衛風、伯兮〕伯や殳(しゆ)(長いほこ)を執りて 王の爲に驅す

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