前進防衛政策[オーストラリア](読み)ぜんしんぼうえいせいさく[オーストラリア](英語表記)Forward Defence Policy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

前進防衛政策[オーストラリア]
ぜんしんぼうえいせいさく[オーストラリア]
Forward Defence Policy

1950年に発生した朝鮮戦争からベトナム戦争の終結にいたる約 20年間,反共主義を掲げたオーストラリアの外交防衛政策根幹を形成した政策。紛争の発生地域にオーストラリア軍を派遣して,武力紛争がオーストラリア本土に拡大しないよう未然に防ぐことを目的とした政策で,この政策のもとでメンジース首相はアジアの地域紛争にオーストラリア軍を積極的に投入した。航空母艦・フリゲート艦の建造,戦闘爆撃機の導入,ゲリラ戦特殊部隊の創設など,最前線における戦闘を想定した部隊構成となっていた。その意味でこれは「前線」防衛政策と理解されるべきである。しかしあくまでアメリカやイギリスなどと協調した「前進」であり,オーストラリア軍の単独行動を前提としたものではない。また東南アジア条約機構 SEATO五ヵ国防衛協定 FPDAなどへの加盟は,アメリカやイギリスなどの大国を中心とした集団安全保障体制への参加であり,オーストラリアの「前進防衛」を孤立させない大前提であった。しかしベトナム戦争の終結とともに前進防衛政策は破棄されることになり,72年に発足したホイットラム労働党政権は,「大陸防衛政策」を導入した。これは以前の政策を 180度転換させたもので,基本的にオーストラリア軍の海外派遣を放棄し,本土防衛に専念するというものである。現在,航空母艦は存在しない。 1990年代には湾岸戦争への参加,カンボジアソマリアでの平和維持活動に参加しているが,これらは国連 PKO活動の一環として実施しているもので,前進防衛の発想ではない。

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