前置詞(読み)ぜんちし

精選版 日本国語大辞典 「前置詞」の意味・読み・例文・類語

ぜんち‐し【前置詞】

〘名〙 (preposition の訳語) ヨーロッパの諸言語などに見られる品詞一つで、英語の in, on などのように名詞代名詞の前に置かれて、その名詞・代名詞と他の語との関係を表わすもの。⇔後置詞
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四「接続詞も前置詞も無い〈略〉菊池一流の英語で」

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デジタル大辞泉 「前置詞」の意味・読み・例文・類語

ぜんち‐し【前置詞】

preposition》ヨーロッパ諸語などにみられる品詞の一。名詞代名詞の前に置かれ、その語の他の語に対する関係を示すもの。英語のat, in, ofなどの類。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「前置詞」の意味・わかりやすい解説

前置詞
ぜんちし

名詞または名詞句の前に置かれ、それらが他の文法要素に対してもつ統語的・意味的関係(「格」とよぶ)を表す文法要素。接辞と異なり、他の語の一部となることがなく、語形変化も行わない。

 名詞の格の表示が語形変化によらない言語(英語、中国語など)では、格は名詞(句)の語順ないし前置詞で示される。この場合、主格は語順で、対格与格は語順または前置詞で、それ以外は前置詞で表されることが多い。英語の例を示すと、〈主格〉‘John loves Mary.’〈対格〉‘John loves Mary.’‘John looked at Mary.’〈与格〉‘John gave Mary a watch.’ ‘John gave a watch to Mary.’〈場所格〉‘John came from Tokyo.’〈道具格〉‘John came by car.’となる。一般に、前置詞の表す格は、主格、対格、与格のような抽象的な「文法格」に比べて、より具体的に「場所、方向、道具、手段、原因、比較」などの意味を表す。

 一方、名詞の格が語形変化で示される言語(ロシア語ドイツ語など)では、それぞれの変化形が広範囲の意味関係を示しうるため、意味を限定し明示するのに前置詞が使われるが、一般に文法格は語形変化で、それ以外は前置詞で示されることが多い。このような言語では、前置詞に続く名詞(句)が一定の格を要求する(「前置詞の格支配」とよぶ)。また、同じ前置詞が、支配する格によって意味を変えることがある(ドイツ語の例。〈対格〉‘in den Garten’「庭へ」、〈与格〉‘in dem Garten’「庭で/庭に」)。

 前置詞は述語が目的語に先行する言語(上記のほか、ベトナム語アラビア語など)に多くみられる。一方、目的語が述語に先行する言語(日本語、朝鮮語ビルマ語など)では、前置詞があまりみられないかわりに、同じ働きが名詞(句)の後に置かれる「後置詞」(国文法でいう「助詞」)によって行われることが多い。以上に前置詞について述べたことは、後置詞についても当てはまることが多い。

山田 進]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前置詞」の意味・わかりやすい解説

前置詞
ぜんちし
preposition

品詞の一つ。通常,名詞・代名詞の前におかれ,それらが意味のうえで文のほかの部分とどういう関係にあるかを示す単語不変化詞の一つ。による語形替変をもつ言語では,それぞれの前置詞について,次にくる名詞の格が決っていて,このことを「前置詞の格支配」という。言語によっては,次にくる名詞についている冠詞と融合して一語とみなされることもある (フランス語の部分冠詞 de+le→duなど) 。歴史的にみると,インド=ヨーロッパ語族では名詞と特定の結合を本来せず,独立に場所の関係などを示す一種の副詞であったものが,特定の格とともにその意味を明確化するために用いられた結果,名詞の格自体の意味が次第に弱まり,特定の格を支配してさまざまの意味を表わす前置詞へと発達したものである。また一方,動詞と密接な関係をもつものも生じ,古代ギリシア語では前置詞の多くが一種の接頭辞となって動詞と結合したし,ゲルマン語では動詞の前綴りとなった。 (→後置詞 )

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百科事典マイペディア 「前置詞」の意味・わかりやすい解説

前置詞【ぜんちし】

品詞の一つ。名詞,代名詞の前に置かれて一つの句をなし,文の他の要素との関係を示す語。格変化をもつ古代語でもかなり使用されているが,後置されたり,形容詞とそれにかかる名詞の中間に置かれる場合もある。ドイツ語やロシア語では前置詞によって後にくる名詞の格変化形が決まる。

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改訂新版 世界大百科事典 「前置詞」の意味・わかりやすい解説

前置詞 (ぜんちし)

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世界大百科事典(旧版)内の前置詞の言及

【品詞】より


【諸言語と品詞】
 ある言語のすべての単語の品詞分類が完成すると,そのおのおのの品詞に名称を与えることになるが,その名称は,言語学的にいえばどんなものであってもよいし,番号であってもよいのであるが,通常は,その品詞に属する単語(の大多数)が表すものの性格や,それらの機能を反映した名称を与えることが多い。前者の例としては,名詞や動詞があり,後者の例としては前置詞などがある。 以下に,そのようにして従来与えられてきた名称を取り上げつつ,人間の言語にどのような品詞が存在する傾向があるかを見てみる。…

※「前置詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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