前座(読み)ぜんざ

精選版 日本国語大辞典 「前座」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ざ【前座】

〘名〙
講釈、話などの前半、あるいは本題にはいる前の部分
洒落本・舌講油通汚(1781)「扨是から後(ござ)をおはなし申上ます。前(ゼン)に申ましたる、通の意味合、いづれも様はいかがおぼしめします」
講談落語などの席で、正規の番組の始まる前、あるいはその席の前半に演ずること。また、その人。真打(しんうち)の登場する前の話や出演者。⇔後座
※洒落本・大門雛形(1789‐1801)三「落咄しの前座といふ人物、今一人は」
落語家格付最下位の者をいう。二つ目の下。
※落語・閉込み(1897)〈三代目柳家小さん〉「先達っても明巣(あきす)を狙ふと云ふ、斯奴(こいつ)泥棒の方で初心、我々の方で前坐と云ふので御坐います」

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デジタル大辞泉 「前座」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ざ【前座】

落語・講談などで、前半または本題に入る前の部分。

説教・講談・落語などの興行で、はじめのほう、または正規の番組の前に出演すること。また、その人。「前座を務める」⇔後座ござ
㋑主となる興行・出演者の前に行われる、添え物の興行・出演者。「ボクシング前座試合」
落語家の格付けで最下位の者。→真打しんうち二つ目

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「前座」の意味・わかりやすい解説

前座
ぜんざ

落語家の最初階級。前座、二つ目、真打(しんうち)としだいに昇進する。仏教界の説教における「前座(まえざ)」からきた用語。「見習い前座」と「本前座」(このうち古顔を「立(た)て前座」という)とがあり、厳しい修業が続く。「見習い前座」を経て楽屋入りするようになると、開演30分前に出勤し、終演後も後かたづけをする。鳴物(なりもの)を習い、真打の手伝いや、「高座がえし」という座ぶとん返し、演題や出演者の名札のメクリ返しの仕事に従事する。楽屋の進行係もつかさどる。この仕事をしながら咄(はなし)の稽古(けいこ)を続け、二つ目への昇進を待つ。

[関山和夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前座」の意味・わかりやすい解説

前座
ぜんざ

落語,講談,浪花節など,寄席で最初に出演する者。転じて落語家,講釈師,浪曲師の登竜門にあたる地位をさす。出番以外は楽屋内の雑用,高座の進行,お囃子の手伝いなども行う。 (→真打ち )  

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世界大百科事典(旧版)内の前座の言及

【講談】より

…当初の大道での辻講釈ではなく,講釈場における話芸としての講釈の完成とともに幾多の名人が出現した。森川馬谷(ばこく)は読み物を初・中・後の3席に分け,修羅場(軍談),評定物(お家騒動物),世話物と区別し,前座を使った。これが,のちの前座・中座読(なかざよみ)・後座読(ござよみ)(真打ち)の順位の基となった。…

【真打】より

…この語は,天保(1830‐44)ごろから使用されるようになった。現在は,前座,二つ目,真打と昇進するが,大正時代までは,二つ目の古参で真打目前の者を三つ目,準真打と称した。真打は,落語家などにとっての最高位にあたるが,昭和50年代に入り,東京落語界では,大量の真打を昇進させる現象がつづき,それが落語界内部でも問題となった。…

【寄席】より

…寄席には昼席(ひるせき)と夜席(よるせき)があり,出演者名と日を記した行灯をかけ,下足番が呼びこみをしていた。噺家が扇子と手ぬぐいで落語を演ずる形式も,前座(ぜんざ)制も,中入りに前座がくじを売る習慣も天保初期には完成されていた。寄席の経営者は〈席亭(せきてい)〉と呼ばれた。…

※「前座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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