刹那
せつな
仏教における最小の時間単位。サンスクリット語クシャナk
a
aの音訳。『大毘婆沙論(だいびばしゃろん)』巻136の譬喩(ひゆ)的説明によると、「2人の成人男子が何本ものカーシー産絹糸をつかんで引っ張り、もう1人の成人男子が中国産の剛刀でもって一気にこれを切断するとき、1本の切断につき64刹那が経過する」と述べられている。2人の男がかりに5000本の絹糸をつかんだとすると、剛刀による一瞬の切断で5000×64刹那の時間が経過するから、1刹那の短さが想像されよう。『大毘婆沙論』同所の科学的説明によると、1昼夜=30須臾(しゅゆ)、1須臾=30臘縛(ろうばく)、1臘縛=60怛刹那(たんせつな)、1怛刹那=120刹那である。1昼夜を24時間として計算すると、1刹那は75分の1秒になる。仏教哲学では「刹那」は、物質的、精神的、なかんずく精神的な現象の瞬間的生滅を説明するときに使われる。なお、今日の「刹那主義」ということばの概念は仏教のものではない。
[定方 晟]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
せつな【刹那】
〘名〙 (kṣaṇa の音訳。念頃(ねんきょう)、念などとも訳する)
① 仏語。時間の最小単位。きわめて短い時間。
一説に六十五刹那を
一弾指という。また、
一刹那は
一念であるが、ときに六十刹那を一念とするともいう。せちな。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「
文殊、
獅子にのりて刹那のあひだに到りて、問ひ給はく」
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)五「母が
最期の一句の詞〈略〉骨にしみ五臓に徹しせつなも忘るる事はなし」 〔
勝鬘経‐一乗章〕
② 数の単位の一つ。非常に小さい数の単位で、10-18 にあたる。
[
補注]元来、仏語だが、日本では古くから
和文にも取り込まれ、「に」を伴って副詞的に用いる例も見られる。
せち‐な【刹那】
※二十五絃(1905)〈
薄田泣菫〉公孫樹下にたちて「長き
千代にも更
(か)へがたの 刹那
(セチナ)の酔にあくがれむ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
刹那
せつな
サンスクリット語 kṣaṇaの音写。叉拏(しゃな)とも音写され,念頃(ねんきょう)とも漢訳される。インドで用いられた,きわめて短い時間を表す単位。1刹那は現在の単位にすれば 0.013秒ぐらいにあたる。また 1弾指(たんじ),すなわち指をはじき鳴らす間に 65刹那が費やされるともいわれる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
デジタル大辞泉
「刹那」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
普及版 字通
「刹那」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の刹那の言及
【時刻】より
…夜のこの時法は〈更〉という表現が用いられ,それぞれ初更,2更,3更,4更,5更ともいわれた。 インドの時法で仏典に見えるものは,最短時間を刹那,120刹那を呾刹那,60呾刹那を1臘縛,30臘縛を1牟呼栗多,5牟呼栗多を1時,6時を1日としているが,どこまで実用されたものかわからない。
[日本の時刻制度]
多くの文化を大陸から受けた日本では,朝鮮,中国との交渉が始まった古代すでに時刻の観念があったと考えられるが,それらの詳細を知る資料はまったくない。…
※「刹那」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報