別納(読み)ベツノウ

デジタル大辞泉 「別納」の意味・読み・例文・類語

ベつ‐のう〔‐ナフ〕【別納】

[名](スル)
ふつう一緒に納めるべきものを別に納めること。「郵便料金別納する」
中世年貢通常手続きを取らずに直接、徴収また上納したこと。

べち‐のう〔‐ナフ〕【別納】

寝殿造りで、母屋おもやから離れて建つ建物。物などを納め、住居ともした。
「―の方にぞ、曹司などして人住むべかめれど」〈夕顔

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精選版 日本国語大辞典 「別納」の意味・読み・例文・類語

べち‐のう ‥ナフ【別納】

〘名〙 (「べち」は「別」の呉音)
寝殿や対(つい)から離れて別に建てた家。物を納めるためのものであるが住居にも用いた。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「べちなうに渡し奉りつ」
② 「べちのうしょ(別納所)」の略。〔西宮記(969頃)〕
③ 別の時期、別の方法などで納めること。特に、中世、年貢を普通の手続とは別の手続で、徴収・上納したこと。また、その区域。べつのう。
吾妻鏡‐元暦元年(1184)七月一六日「於上野国黒河郷、止国衛使入部、可別納之由、賜御下文

べつ‐のう ‥ナフ【別納】

〘名〙
① 別の方法で納めること。別に納めること。べちのう。

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改訂新版 世界大百科事典 「別納」の意味・わかりやすい解説

別納 (べちのう)

平安・鎌倉時代の社会経済上の用語。一般的には貢租別枠で納入することをいう。〈べつのう〉ともいう。律令制下においては別納租穀の用語があり,国で租の一部をさいて穀とし,民部省に送って位禄季禄・衣服料等にあてたものであった。平安前期までの別納はこの種のものに限られる。平安後期から鎌倉期においては,開発その他の由緒によって特定の領主庁宣や下文を与え,国衙使等の入部を止めるなどの特権を付与したことをいう。鎌倉時代の九州では,国御家人の所領を安堵したうえで,より広域的に東国御家人地頭職を付与し,いわゆる小地頭惣地頭の重層的関係が成立していたが,惣地頭が小地頭の権限を侵すときは,小地頭に別納の下文を与え,惣地頭の支配外におくこととされていた(《御成敗式目》38条)。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「別納」の解説

別納
べちのう

「べつのう」とも。規定の徴税手続きや経路とは別に,徴税物を納入すること。10世紀以降の公領や荘園で,官物や雑役(ぞうやく)の一部ないし全部が,徴符や免符に従って他の領主に納入されることをいう。本来は年貢など収益を生みだす土地である下地(したじ)を特定せず徴税物が納入されたが,のちには下地が特定され,その下地自体も別納とよんだ。鎌倉時代には,名主(みょうしゅ)が年貢納入を地頭をへずに直接領主に納めることをもいった。

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世界大百科事典(旧版)内の別納の言及

【別納】より

…〈べつのう〉ともいう。律令制下においては別納租穀の用語があり,国で租の一部をさいて穀とし,民部省に送って位禄・季禄・衣服料等にあてたものであった。平安前期までの別納はこの種のものに限られる。…

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