初重(読み)しょじゅう

精選版 日本国語大辞典 「初重」の意味・読み・例文・類語

しょ‐じゅう ‥ヂュウ【初重】

〘名〙
物事の、最初の段階。〔日葡辞書(1603‐04)〕
声明(しょうみょう)講式平家琵琶(びわ)などで、最低の音域で歌われる部分。→講式
太平記(14C後)二一「真都(しんいち)三重(ぢう)の甲を上れば、覚一初(ショ)重の乙に収て歌ひすましたりければ」
重箱の、いちばん上の段。
※料理早指南(1801‐04)二「初重(ショジウ)魚るい、二重め精進、三重め鮮詰(なまづめ)、四重めむし菓子と仕組たり」

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改訂新版 世界大百科事典 「初重」の意味・わかりやすい解説

初重 (しょじゅう)

日本音楽用語。仏教音楽の声明(しようみよう)の音楽理論において,低・中・高の3段階の音域を区別する場合に,その低音域をいう。たとえば,3オクターブに及ぶ五音ごいん)の配列においては,宮から羽をひとまとまりとして,もっとも低い音域のものを初重という。また,同じ詞章による短い旋律を,低,中,高と音高を変えながら3回反復して演唱するときには,その最初の句をいう。反復するときの音程関係は,理論的にはっきり規定されているものと,規定されていないものとがある。今述べた初重は,二重,三重に対するものであるが,同じ声明でも講式においては,二重,三重のほかに中音,下音なども加わって,単なる音域上の区別ではなくなり,それぞれ固有の旋律と表現形式を備えた楽曲構成上の一単位となっている。すなわち,シラビックに淡々と演唱して,そのあとに続くメリスマ(装飾的声楽様式のひとつ)的な二重や,朗々と演唱する三重を引き立たせるという,いわば地のような機能を持つのが講式の初重である。この用語は平曲にも取り入れられ,節物(ふしもの)の曲で,ゆったりとおだやかに語られる部分と,それに対する琵琶前奏の手をいう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「初重」の意味・わかりやすい解説

初重
しょじゅう

日本音楽の用語。本来人声の声域約3オクターブのなかの最低のオクターブをいったが,実際には低音域のいくつかの音だけをいったり,単に低音部いい,さらには旋律形態名称としても用いられた。声明の講式や,平曲などで用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の初重の言及

【平曲】より

…拾イ類の曲節を多く含む句が〈拾イ物〉とよばれる。(5)フシ類(三重(さんじゆう)・中音(ちゆうおん)・初重(しよじゆう)など) ユリをたっぷりきかせ,最も旋律的な曲節。美文調の部分に多く用いられる。…

※「初重」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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