初穂・早穂・最花(読み)はつお

精選版 日本国語大辞典 「初穂・早穂・最花」の意味・読み・例文・類語

はつ‐お ‥ほ【初穂・早穂・最花】

〘名〙
① その年になって初めて実った稲の穂。
※江帥集(1111頃)「きみがよのよろづのあきのはつほなるよしだのさとのいねをこそつけ」
② その年初めて出た草の穂など。
※夫木(1310頃)一一「かれねただはつほのすすきたまくらにむすばば露の散りもこそすれ〈藤原為家〉」
穀物、野菜、くだものなどの、その年最初にできたもの。
日葡辞書(1603‐04)「Fatçuuo(ハツヲ)
神仏朝廷などにたてまつる、その年最初に収穫した野菜、穀物などの農作物。また、神仏へ奉納する金銭、米穀など。おはつお。
※延喜式(927)祝詞(九条家本訓)「初穂(ハツホ)は汁にも穎にも、千稲・八千稲に引き据ゑて」
※源氏(1001‐14頃)早蕨「蕨・つくづくし、をかしき籠に入れてこれは、わらはべの供養じて侍るはつをなりとてたてまつれり」
⑤ はじめて飲食するもの。まだ食べたことのない食べ物。また、他人に先んじて、最初に食べ味わうことやその食べ物。おはつお。
浄瑠璃・善光寺御堂供養(1718)三「但女子の汲んだがお厭なら、今入替へて煎じばな、初をなれどエイ捨てて退けうと指出す」
赤ん坊が初めて食べる食べ物。
⑦ (比喩的に) 他人に先んじて、ある物を利用したり、ある女性を手に入れたりすること。
※雑俳・軽口頓作(1709)「よいものじゃ・何でも初尾まあ旦那
銭貨改鋳の際、はじめに鋳造された貨幣。〔三代実録‐貞観一二年(870)一一月一七日〕
⑨ 少しばかりのもの。〔俚言集覧(1797頃)〕
[語誌](1)発音が〔 fatufo 〕から〔 fatuwo 〕に変化したため、中世には「はつを」「初尾」とも書かれた。「初尾」は穂を長い尾に見たてた表記。
(2)近代になって、ハツヲは転訛形で、ハツホが正しい語形であるとする意識が生じ、明治中期ごろから再び、ハツホで呼ばれるようになる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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