初物(読み)はつもの

精選版 日本国語大辞典 「初物」の意味・読み・例文・類語

はつ‐もの【初物】

〘名〙
① その季節になって、初めてできた穀物野菜果物など。あるいは盛りの季節に先がけてとれた走りの魚類など。また、その年初めて食べるものをさしてもいう。
壬二集(1237‐45)「大淀あまのをとめご春されば神のはつものみるめかるなり」
浮世草子傾城色三味線(1701)江戸せせり箸して亭主が気を付し初(ハツ)物もかまはず」
処女、または童貞をいう。
浄瑠璃八百屋お七(1731頃か)上「本郷の八百屋の花柚松茸のつぼみもいづれ初もの」
③ はじめて経験する物事
※兎糞録(1913)〈和田垣謙三〉一一二「僕は其時、生憎破裂さすべき癇癪玉を持合せて居なかったけれども、初物とあればやって見たい気も起る」

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デジタル大辞泉 「初物」の意味・読み・例文・類語

はつ‐もの【初物】

その季節に初めて収穫した野菜・果実・穀物など。魚介などにもいう。はしり。
まだだれも手をつけていないもの。処女や童貞などにもいう。
[類語]走り

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の初物の言及

【旬】より

…魚では生殖期直前の脂ののった時期であることが多く,蔬菜では収穫期の初めのころである。しゅん以前のものは〈走り〉〈初物〉,しゅん過ぎのものは〈しゅんはずれ〉と呼ばれたが,遠洋への出漁による漁獲や促成栽培の日常化により,日本人の食生活をいろどっていた季節感は薄れ,しゅんもまた失われつつある。(2)古く朝廷で毎月4回天皇が臣下から政務をきく儀式があり,これを旬(しゆん)と呼んだ。…

【贄】より

…神または首長さらに天皇,貴人などへ供する魚鳥獣果実を中心とした食物。〈にえ〉は,共同体の収穫や獲得物を神または首長にささげる初物貢献儀礼の〈には〉〈にへ〉など新嘗(にひなめ)にかかわる語といわれ,共同体において,田からの初穂とともに神や首長にささげる山野河海の獲物の初物という性格をもっていた。さらに共同体間において,征服された共同体の土地からとれた食物を征服者へ貢献することによって服属のあかしとする,服属貢献物の性格もあった。…

※「初物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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