切符(読み)きっぷ

精選版 日本国語大辞典 「切符」の意味・読み・例文・類語

きっ‐ぷ【切符】

〘名〙
② =きりふ(切符)②〔前田本下学集(室町末)〕
④ 乗車船の際や劇場などに入場する際に、料金支払済みを示す紙片チケット。〔和蘭字彙(1855‐58)〕
金毘羅(1909)〈森鴎外〉「新橋行の二等の切符と急行券とを」
⑤ 商品を買うことのできる証券。また、特定品物の受け渡し、配給のしるしに使う券。衣料切符など。
風俗画報‐二三四号(1901)倉庫「切符を与へ、以て現品払渡口より受取るべき順序なり」
納税の通知書。
交通違反をしたときに警察が違反者に渡す書類。
⑧ (比喩的に) あるものごとをすることができる権利資格。「本選出場のきっぷを獲得する」

きり‐ふ【切符】

〘名〙
租税などを割り当てる文書。貢納すべき数量を記載する。年貢公事などの支配状。きっぷ。
※中右記‐康和四年(1102)七月一一日「御寺木守泉木津下人等、依山城国司切符、院下部庁官等責催之処、去夜御寺大衆乱発、行向凌礫院使了」
為替(かわせ)手形。金銭などの支払い証券。割符切手(きって)。きっぷ。
※親長卿記‐文明五年(1473)一一月七日「仍千疋切符、今日到来
③ 家臣等に支給する一定額の手当て。きっぷ。
※言経卿記‐天正一八年(1590)一一月二六日「御つほねねうはうのきりふなとは、御さとより御まかないたるへく候」
④ 和船建造の際、所要部材の寸法、数量などを詳細に記した寸法書。
※大住吉丸御造替日記(1826)「従先年、御船造替有之節は御船大工より切符差越候上にて杣取申付候得共」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「切符」の意味・読み・例文・類語

きっ‐ぷ【切符】

金銭支払い済みの証拠となる紙片。乗車券・入場券・観覧券など。「電車の切符
品物の引き換え、配給などのしるしに使う券。「交通違反の切符を切られる」「衣料切符
出場できる資格や権利。「甲子園への切符を手にする」
[類語]チケット

きり‐ふ【切符】

租税などの割り当てを記した文書。年貢公事の支配状。
割符さいふ
和船建造で、所要部材の寸法や数量などを詳細に記した書。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「切符」の意味・わかりやすい解説

切符 (きっぷ)

〈きりふ〉とも読む。平安末期ころから租税などの納入命令書,あるいは為替などの証券の意味に用いられた。現在では入場券または乗車乗船券などを切符と呼んでいるが,第2次世界大戦およびその前後の物資統制時代には,衣料品の配給を受けるための衣料切符などがあった。劇場や相撲場が,芝居茶屋や相撲茶屋を介さずに直接入場券を売る切符制度を採用したのは,1911年3月に開場した東京の帝国劇場にはじまる。その切符は英語のticketをなまって〈テケツ〉と呼ばれ,やがて映画館や劇場の入口で,それにはさみを入れる女性たちをもテケツあるいはテケツ・ガールなどと呼んだ。
割符(さいふ)
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の切符の言及

【切手】より

切符(きつぷ∥きりふ)と手形を合わせた語で,証券,証書などの意。《日葡辞書》に〈Qitte 何か物などの引渡しを命ずる証拠の紙,または書付〉と見え,中世では為替をさすことが多く,近世では往来手形などの通行証や営業許可証,あるいは入場券や商品券などをいった。…

【切符】より

…平安末期ころから租税などの納入命令書,あるいは為替などの証券の意味に用いられた。現在では入場券または乗車乗船券などを切符と呼んでいるが,第2次世界大戦およびその前後の物資統制時代には衣料品の配給を受けるための衣料切符などがあった。劇場や相撲場が芝居茶屋や相撲茶屋を介さずに直接入場券を売る切符制度を採用したのは,1911年3月に開場した東京の帝国劇場にはじまる。…

【為替】より

…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…

【切手】より

切符(きつぷ∥きりふ)と手形を合わせた語で,証券,証書などの意。《日葡辞書》に〈Qitte 何か物などの引渡しを命ずる証拠の紙,または書付〉と見え,中世では為替をさすことが多く,近世では往来手形などの通行証や営業許可証,あるいは入場券や商品券などをいった。…

【下文】より

…はじめは前右大将家政所下文と称し,92年征夷大将軍に任ぜられると将軍家政所下文となり,のち将軍を辞すと前右大将家政所下文に戻るが,いずれにしても鎌倉殿の下文として,地頭の補任,知行恩給,安堵等に関する幕府の重要文書の先蹤となった。なお,10,11世紀ころから,太政官が各官司に調庸等を班給する文書として,官切下文(弁官局が各官司ごとにその品目数量を書き上げ,これに上卿の宣旨書を受けた文書)が,また大蔵省が諸国に租税・貢物を催促する文書として,省切下文があったといわれるが,これはのちに切符といわれる短冊型(縦25cm,横10cmぐらい)の小紙片に書かれた文書と考えられる。切符は,12世紀以降,段銭の配符,銭貨の下行切符等に用いられるが,段銭の場合,はじめ留守所下文の形をとった。…

【乗車券】より

…鉄道,軌道,自動車等の利用に際し,旅客と運送事業者との間の権利義務を表象する証票。一般に切符と称される。 乗車券はいくつかに分類することができる。…

※「切符」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android