切支丹屋敷(読み)きりしたんやしき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「切支丹屋敷」の意味・わかりやすい解説

切支丹屋敷
きりしたんやしき

江戸・小石川小日向(こひなた)(東京都文京区)に設けられ、キリシタン伴天連(バテレン)らを収容した所で、山屋敷ともよばれた。宗門改役(あらためやく)を兼ねた大目付井上筑後守政重(ちくごのかみまさしげ)がその下屋敷に、1643年(寛永20)日本へ潜入したイタリア人伴天連キアラ(岡本三右衛門)らを収容、宗門改の情報を集めたのに始まり、1646年(正保3)には籠舎(ろうしゃ)・倉庫などを整備した。1708年(宝永5)に潜入した伴天連シドッチも翌年ここに収容され(1715年牢死)、新井白石(あらいはくせき)が直接尋問して互いにその人物・識見を評価しあった。白石はその影響を受け、『西洋紀聞』その他を著し、キリシタンの日本侵略説を否定、世界的視野の拡大をもたらし、洋学摂取への道を開いた。その点において、近世文化史上、重要な遺跡であるが、1724年(享保9)籠舎は焼失したまま収容者もなく再建されず、1792年(寛政4)宗門改役の廃止とともに廃絶した。その後、幕臣に土地が分与され、現在は茗荷谷(みょうがだに)の俗称切支丹坂、俗説的八兵衛石などにわずかにその跡をとどめているにすぎない。

海老沢有道


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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