切出・伐出(読み)きりだし

精選版 日本国語大辞典 「切出・伐出」の意味・読み・例文・類語

きり‐だし【切出・伐出】

〘名〙
[一]
森林から材木をきり出すこと。
※地方凡例録(1794)二「此御林前々御用木に伐出有之か」
② きったままで、鉋などで削っていない木。
※不意の声(1968)〈河野多恵子〉「靴を脱いで、その狭い切り出しの縁側にあがる」
[二] (切出)
① 余分なものの意。
(イ) 江戸時代、金座で延金を小判に切りおろす際にできる屑物(くずもの)
(ロ) 帆船時代に行なわれた積荷の出目。受渡し時の目方より引渡し時の目方のほうが多い場合、その過上分をいい、これを船員余得として収得することをもいった。
※船道定法之記「右之通切出しは江差積に限り此外は諸事可為古法べし」
② 先が尖って、斜めに刃のついた小刀。切出し小刀。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
③ 歌舞伎などの大道具の一つ。立木植込み石灯籠、建物などの形を厚紙ベニヤ板などで切り抜いて彩色し、裏に木枠を打ちつけて舞台に立てるようにしたもの。
※歌舞伎・身光於竹功(1864)「向う蔵前通り、切出(キリダ)しの遠見になる」
④ 話などを話し始めること。また、話し始めの部分。
※冬の宿(1936)〈阿部知二〉一二「今迄のことは、話の切り出しの為の廻り道でした」

きり‐だ・す【切出・伐出】

〘他サ五(四)〙
[一]
惣荘のうち一部の土地を特定し、その地に相応する年貢等を上納する。
※東文書‐一・嘉禎四年(1238)一〇月一九日・六波羅裁許下知状「承久以前廿年之間、切出所当廿五石之由、虚誕也」
② 材木や石材などを切り取って運び出す。切りいだす。
※三四郎(1908)〈夏目漱石〉四「山から切り出すのに幾日(いくか)とか掛って」
③ 刀を振り上げてきりかかる。
※応仁別記(15C末か)「老体ながら其身軽に前庭に躍出て、人はなきか、者共、切出せ、と申されければ」
[二]
① (切出) 話そうとしていたことを話し始める。言い出す。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「暫く躊躇(ためら)ひて、任(まま)よと遂に切出(キリダ)す」
小切手手形などを振り出す。
※都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉「詐欺師でない以上は誰がそんな不渡手形を切出して金を要求出来るものではない」

きり‐いだ・す【切出・伐出】

〘他サ四〙 =きりだす(切出)(一)〔文明本節用集(室町中)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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