分子不斉(読み)ブンシフセイ(英語表記)molecular asymmetry

化学辞典 第2版 「分子不斉」の解説

分子不斉
ブンシフセイ
molecular asymmetry, molecular dissymmetry

不斉原子を含まない分子光学活性を示す現象旋光性物質には,分子内に不斉原子を含むものとそうでないものとがある.不斉原子を含まない分子が旋光性を有するのは,分子の構造になんらかの非対称性が生じているためと考えられ,この現象を分子不斉という.この現象は,たとえば4,5-ジメチルフェナントレン(a),ヘキサヘリセン(b)のように,立体障害のために平面構造がとれず,分子にらせん形のひずみが生じることによって現れる.分子不斉はアレン(c)にも現れる.それは,両端の2個の原子が中心炭素と形成する平面が直交関係にあるために不斉が生じるもので,実際に光学異性体が分割されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分子不斉」の意味・わかりやすい解説

分子不斉
ぶんしふせい
molecular asymmetry

光学異性体を有する化合物には不斉炭素原子をもつものと,不斉炭素原子をもたなくても分子内の原子または原子団が非対称的に配列されているため,分子全体の形が対掌体構造 (光学対掌体 ) をとる場合とがある。後者の場合を分子不斉という。不斉炭素原子を有する化合物と同様に,d -,l -化合物およびラセミ体があり,アレンとその誘導体,スピラン化合物,ジフェニル誘導体に例がみられる。図で2つの二重結合の面は互いに直交している (イは画面の後方へ出ている結合,ロは前方へ出ている結合,ハは画面上の結合を表わす) 。この化合物の誘導体のラセミ体は光学活性体に分割されている。無機化合物では金属錯体に分子不斉がみられる。

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