精選版 日本国語大辞典 「出入」の意味・読み・例文・類語
で‐いり【出入】
〘名〙
① (━する) 出ることと入ること。しゅつにゅう。また、現われたり隠れたりすること。ではいり。出没。
※侍所沙汰篇‐文暦二年(1235)正月二七日「於二自今已後一者、早伺二見如レ然之族一、云二京中一、云二辺土一、見二知出入之所々一」
※玉塵抄(1563)一三「吏と云は国郡の所務のていりを存じて物をむさぼり民をかすめなやまして」
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉六「商人は店を閉ぢて、一日の出入りを算ふ」
※高野山文書‐(年未詳)正月一〇日・智荘厳院書状「指引算用仕候へば、過分之出入に候間」
(ハ) 売り買いすること。売買。
※三貨図彙‐遺考(1825頃)一「絹布・綿・油・酒等之諸商人、仕切出入之分金相場直段違ひ齟齬多く、市中商人ども甚喧し」
③ (━する) 普段から親しくその家を訪問していること。また、商売などでその家を得意としていること。ではいり。
※玉塵抄(1563)二二「貴人の家にをやにそうてでいりをしたぞ」
※図師氏文書‐天正元年(1573)一二月二四日近江山上村荒野年貢定文(近江神崎郡志稿)「荒野年貢相納に付而、互出入在レ之」
※浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)三「片手にりんと尻ひっからげ、出入花さく折も折」
⑤ 江戸時代、出入筋(でいりすじ)といわれる訴訟手続により裁判の行なわれる事件。ふつう民事事件にあたると解してよいが、理不尽、口論、疵付(きずつけ)のような刑事事件は、相手方に返答書の提出が命ぜられ、これに含められた。吟味物に対する語。公事(くじ)。訴訟。公事出入。公事訴訟。出入物。
※浮世草子・新可笑記(1688)三「遠国の出入を都にて聞届け」
⑥ 移り変わり。
※玉塵抄(1563)二二「気候時節のでいりなどをよう卜(うらない)知たぞ」
⑦ 歌舞伎などの舞台装置で、登場人物が出たりはいったりすることのできるようにしてあること。ではいり。
いで‐いり【出入】
〘名〙
① (━する) 出たりはいったりすること。出はいり。
※万葉(8C後)七・一一九一「妹が門(かど)出入(いでいり)の河の瀬を早み吾が馬つまづく家思ふらしも」
※蜻蛉(974頃)上「このいま一方(ひとかた)のいでいりするを見つつあるに」
② 立ち居振舞い。
※土左(935頃)承平五年二月一五日「いへの人のいでいり、にくげならず、ゐややかなり」
③ 支出と収入とを計算すること。差引き勘定。
※詩学大成抄(1558‐70頃)六「計会とは物のけつげさんようをして出て入りのつぢをあわする」
④ もめごと。訴訟沙汰。でいり。
※俳諧・毛吹草(1638)七「せんさくしたる法の出入 うはまへをとりかぢなれや湊舟」
[補注]「万葉集」の例は、地名の「入の川」をかける。
しゅつ‐にゅう ‥ニフ【出入】
〘名〙 出ることとはいること。出たりはいったりすること。でいり。ではいり。また、出すことと入れること。出したり入れたりすること。だしいれ。しゅつじゅう。
※万葉(8C後)五・八一〇・題詞「長帯二烟霞一、逍二遙山川之阿一、遠二望風波一、出二入鴈木之間一」
※天草本平家(1592)二「トシゴロ ワガ コノ アタリヲ xutnhǔ(シュツニュウ) スルヲ」
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉三「衡門(かぶきもん)に黒ぬり車出入(シュツニフ)させて」 〔書経‐冏命〕
いで‐い・る【出入】
〘自ラ四〙
① 現われたり消えたりする。
※古事記(712)中(兼永本訓)「大熊髪(ほの)かに出入(イデイリ)て即ち失せぬ」
② 出たりはいったりする。
※歌仙本小町集(9C後か)「波の面を出入る鳥はみなそこをおぼつかなくは思はざらなむ」
※枕(10C終)二五「出でいる車の轅(ながえ)もひまなく見え」
だし‐いれ【出入】
〘名〙
① 出すことと入れること。物品または金銭を出したり入れたりすること。
※応永本論語抄(1420)堯曰第二〇「倉奉行は官物なれども我ままにえず。只だしいれをするばかり也」
② 出汁(だしじる)を入れる器。
※洒落本・昇平楽(1800)「向ひの娘が醤油買に行くとくりはうどんやのだし入れ」
いだし‐い・る【出入】
〘他ラ下二〙 出入りさせる。聟(むこ)として通わせる。
※源氏(1001‐14頃)紅葉賀「たまさかにても、かからん人をいだしいれて見んに、ますことあらじと見え給ふ」
で‐い・る【出入】
〘自ラ四〙 出入りする。愛顧を受けてその人のところへ足しげく出はいりをする。
※玉塵抄(1563)一四「車馬にのる客人のでいらぬしづかな所につくらいではぞ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報