出入国管理(読み)シュツニュウコクカンリ

デジタル大辞泉 「出入国管理」の意味・読み・例文・類語

しゅつにゅうこく‐かんり〔シユツニフコククワンリ〕【出入国管理】

国境空港・港などを出入りする外国人自国人を国が管理すること。日本では入管法に基づいて行われる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「出入国管理」の意味・わかりやすい解説

出入国管理 (しゅつにゅうこくかんり)

国境を出入りするすべての人の出入国を規律する制度。国民も外国人も,その対象となる。やや広義では,在留外国人の管理を含む。国家の独立と主権は,国際社会成立の前提であるから,国境管理ないし外国がかかわる事項の管理は,国家の対外権の行使によって自由に規律することができるというのが,国際法上の原則である。出入国管理が問題になるのは,近代国家による国際社会が形成されてからである。それ以前は,人々は土地に縛りつけられ,国民の国内における居住・移転の自由さえ保障されていなかった。フランスの1791年憲法が,在留外国人の法的地位を保障する規定(前文,4条)をおいたのは,重要な歴史的意義をもつ。

日本では,幕末開港の後,修好条約締結国の国民に,横浜,長崎,神戸,新潟,函館の各港が開かれ,1870年(明治3)に〈東京在留外国人遊歩規定〉という布告がだされて,開港場より10里以内の地における外国人の安全が,はじめて法的に保障された。その後,現実の必要に応じて数次にわたる法令の制定改廃をみたが,第2次大戦前はいわば“切り捨て御免”的な色彩が強かった。

 第2次大戦後,日本国憲法が制定され,基本的に国際交通の自由の保障が宣明(とくに22条〈居住・移転の自由〉を参照)されたが,平和条約の発効(1952年4月28日)までは,出入国管理権は,占領軍の手にあり,その下で制定された勅令〈外国人登録令〉(1947公布)を主たる法規として運用された。平和条約の発効にともない,〈出入国管理令〉(1951年公布の政令),〈外国人登録法〉(1952公布)が制定されるとともに,〈入国管理庁設置令〉(1951年公布の政令。同庁は後に法務省入国管理局へ改組)が制定され組織が整えられて,回復された出入国管理権の行使体制がつくられた。その後30年の間,出入国管理令は改正されなかったが,1980年代になって,国際交通の発達,日本の経済的地位の向上等の時勢の変化に対応するため,在留資格を整備し,在留資格の変更・再入国制度の自由化をはかり,在日韓国・朝鮮人の特例永住許可制度を定め,退去強制事由等を国際人権規約に適合するようにし,また難民条約難民)の批准にともない,条約の趣旨を実現するための改正が行われた。名称も〈出入国管理及び難民認定法〉(1982公布)となった。

同法は,本邦に入国し,または本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理について規定することを目的とする(1条)ので,国民と外国人双方の出入国が対象となる。出国する日本国民は,有効な旅券を所持し,旅券に出国の証印をうけなければならず(60条),帰国する者は,有効な旅券を所持し,帰国の証印をうけなければならない(61条)。外国人は,本邦に入国するには有効な旅券または乗員手帳の所持が必要で,上陸のためには在留資格該当性(外交官,公務を帯びる者,観光客等,事業活動・研究・教育・技能修得・芸術・スポーツ・宗教・報道等に従事する者等としての活動のいずれかに該当すること)が要求される(7条,別表第1,第2)。日本国民の福利を妨げ,治安を乱し,国の安全と国民主権を侵害するおそれのある者は,上陸が拒否される(5条)。入国,上陸要件を満たして在留する者は,外国人登録が必要であるが,それによりそれぞれの在留資格に応じた在留が保障される。近時,在留外国人には,ひろく内外人平等とりわけ人権保障が及ぼされるようになった。しかし,外国人であるかぎり,一定の違法行為(不法入国・上陸,資格外活動,不法残留,外国人登録法その他の法令違反など)があるときは,退去強制に処せられる(24条)。

 上陸拒否,退去強制の処分については,不服審査制度が定められている。上陸申請は,まず入国審査官の審査を受ける(7条)。入国審査官が上陸拒否事由ありとしたときは,特別審理官のもとで口頭審理が行われる(10条)。当該外国人は,代理人をつけ,証拠を提出し,証人を尋問することができる。そして特別審理官が上陸拒否事由ありとしたときは,当該外国人は主任審査官に異議の申立てをすることができ,この異議は法務大臣が裁決する(11条)。ただし,法務大臣は,異議の申出が理由がないと認める場合でも,一定の場合には,その者の在留を特別に許可することができる(12条)。

 日本における出入国管理上の重要問題は,戦前〈日本臣民〉とされた人々およびその子孫(在日朝鮮・韓国,中国,台湾人)の処遇である。これらの人々は歴史的,社会的に重要な意味をもつだけでなく,外国人登録をした在留外国人の60%を占めている。戦後,在留資格なくして在留できる者と法的に規定され,曲折の後,多くの人が日韓協定による永住者または,前記法改正による特例永住者(付則7)として在留の安定がはかられた。その後さらに〈日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法〉により,法的地位が確立された(1991)。

 出入国管理は,国際社会の発展,すなわち主権委譲,人権の国際的保障などの進展に伴い,一般に緩和の傾向にある(最も進んだ例としてEU)。
外国人 →在日朝鮮人
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出入国管理」の意味・わかりやすい解説

出入国管理
しゅつにゅうこくかんり
immigration

外国人の自国領域内への入国,上陸,在留,出国ならびに自国民の出国および帰国に関する国家の管理。日本では出入国管理及び難民認定法がこれらについて規定し,法務省入国管理局,地方入国管理局がその事務を所掌する。税関検疫と合わせて CIQ(Customs=税関,Immigration=出入国管理,Quarantine=検疫)と総称される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android