〘形口〙 すご・し 〘形ク〙 (心に強烈な戦慄
(せんりつ)や衝撃を感じさせるような、
物事のさまをいう)
① ぞっとするほど恐ろしい。
気味が悪い。
鬼気迫るようである。
※
源氏(1001‐14頃)末摘花「かの物におそはれし折思し出でられて、荒れたる様は劣らざめるを、程のせばう、人気のすこしあるなどになぐさめたれど、すこう、うたていざとき心地する夜の様なり」
※
読本・英草紙(1749)二「
山下(ふもと)を行く道の傍一所の
墓地あり。化人場頭樹木自ら木も
殺気(スゴ)くて」
② ぞっとするほどさびしい。荒涼とした感じで背筋が寒くなるほどである。
※赤人集(11C初か)「なつなればすごくなくなるほととぎすほとほといもにあはできにける」
③ ぞっとするほど美しい。戦慄を感じさせるようなすばらしい風情である。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「横笛を声のいづるかぎりふき給ふ。おもしろき折にあひて、あはれにすごう、これもよになくきこゆ」
④ あまりにその程度がはなはだしくて、人に舌をまかせるほどである。
※土(1910)〈長塚節〉一〇「次の日には空は些(いささか)の微粒物も止めないといったやうに凄(スゴ)い程晴れて」
⑤ (連用形を副詞的に使うことが多い) 程度のはなはだしいことを表わす。たいへん。たいそう。とても。ふつう、口頭語として使われる。
※人情本・英対暖語(1838)五「杜若(やまとや)の女清玄のすごく美麗(うつくしい)のを視様だらふと、それが楽しみだヨ」
※森と湖のまつり(1955‐58)〈武田泰淳〉一六「ともかく、すごく苦しそうにうなっていたからね」
[語誌](1)「平家物語」には、「幽」(四部本‐灌頂)、「孤」(百二十句本‐三)、「苦」(熱田本‐灌頂)を、それぞれ「スゴシ」と訓む例が見られる。しかし、「凄」を「スゴシ」と訓む例は、中世の作品には見出し難い。むしろ、「凄」は中世後期には「冷」等の漢字とともに「すさまじ」と訓まれている〔文明本節用集・温故知新書・和玉篇〕。
(2)中世には、「すごし」の意義が「すさまじ」に接近していたところから、近世の辞書類になると、その「すさまじ」を媒介として、「凄」を「物スゴシ」〔希雅〕としたり「すごし」に「凄々の意也」〔和訓栞〕としたりするものが現われてくる。
すご‐げ
〘形動〙
すご‐さ
〘名〙